5月14日~18日原油マーケットレビュー

  前週のNY原油相場は続伸。世界的な需給引き締まりへの期待感から買い優勢の展開となっている。ジリジリと上値を切り上げており、WTI期近6月限は一時72.30ドルまで上昇、期近ベースとしては約3年半ぶりの高値を付けた。ブレントはWTIを上回るペースで上昇し、節目の80ドルを上抜くに至っている。

 米国の対イランへの制裁再発動による原油供給の停滞への懸念が、根強い買い材料となった。米国はイランからの原油調達を削減するよう各国に要請しており、制裁再開後にはイラン産原油の供給量が滞るとの見方が強い。また、ベネズエラの減産傾向も強材料視された。経済危機に陥っている同国の産油量は、前年に比べて日量50万バレルほど減少している。大統領選では欧米諸国との関係が悪いマドゥロ氏の再選が濃厚であり、経済制裁強化によりさらなる減産や輸出低下に陥ることも懸念される。国際エネルギー機関(IEA)の月例報告で、経済協力開発機構(OECD)の石油在庫は過去5年平均を下回ったことが示された。市場均衡の目標とされる水準以下にまで在庫が取り崩されるなか、イランおよびベネズエラからの供給量のさらなる減少により、需給はタイト化へと進むとの見方が相場を買い支えた。

 一方で不安要因も散見されており、右肩上がり一辺倒の相場展開には懐疑的にならざるを得ない。欧州連合(EU)は、米国抜きでイラン核合意を存続し、経済協力関係を維持する方針を示している。米国が対イラン制裁を発動するのは半年後であり、目先の原油輸出が減少することはない。また、EUとの貿易摩擦への懸念もあるため、米国が強硬姿勢を貫くことも不明な状況にある。イランからの供給減少懸念は直近の原油価格上昇で織り込んでいるため、これを手掛かりとした一段の上昇は見込み難いところ。仮にイランが大幅な輸出減を強いられ、原油市場が逼迫する事態に陥った場合には、協調減産終了の可能性も出てくるだろう。在庫水準からは協調減産が奏功したと考えられ、油価も安値圏からは十分に戻している。

 ドル高基調も上値を抑制する一因。調整終了後、再度ドル高の流れにある。買われ過ぎ感はあるが、これまではドルショートの巻き戻しの動きから上昇していた感があるが、足元ではドル買いが強まっていると判断せざるを得ない。良好な米経済指標もあるが、米長期金利の上昇は避けられないとの見方から、金利差からのドル買いの動きが鮮明となっている。原油相場はドル建てで取引され、ドル高は割高感につながることから、金利上昇、ドル高、原油高のトリプル高といった足元のバランスは早晩崩壊する可能性が高い。

 投機筋の動きにも注意が必要である。CFTCの建玉明細によると、ヘッジファンドなどの投機筋の買い持ちが3週連続で縮小している。売り買いともにピーク時に比べるとポジションが減ってはいるが、買いポジションの解消(手仕舞い売り)を進めていることが窺える。十分な利益を確保したファンドが利食い売りを進め、出遅れた一般投資家などが高値掴みさせられている可能性もある。警戒が必要な局面といえよう。

 

今週の予想

  • WTI    やや弱め 70.00-73.00ドル
  • BRENT    やや弱め 77.50-80.50ドル