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特集:自動車セクターの最近の動き(スズキ、デンソー、マツダ、トヨタ自動車)
今中 能夫
楽天証券投資weekly セクター・投資テーマ編
毎週金曜日夕方掲載。楽天証券経済研究所チーフアナリスト 今中能夫の、今週1週間の国内株式市場の情報がつまった週刊レポートです。注目セクターと投資テーマに重点を置いて、相場と銘柄を…

特集:自動車セクターの最近の動き(スズキ、デンソー、マツダ、トヨタ自動車)

2018/4/13
・世界の新車販売台数は順調に伸びており、2018~2019年には1億台の大台に乗ると予想される。
・アメリカでライトトラック(SUVとピックアップトラック)が順調に売れており、アメリカ市場の伸びを牽引。インドの成長性にも注目したい。
・中長期投資でスズキ、デンソー、短期投資でマツダ、トヨタ自動車に注目したい。
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毎週金曜日夕方掲載

本レポートに掲載した銘柄

スズキ(7269)、デンソー(6902)、マツダ(7261)、トヨタ自動車(7203)

 

1.拡大続く世界の新車販売

 今回は自動車セクターの最近の動きを概観しました。

 世界の自動車市場は拡大し続けています。グラフ1は国際自動車工業連合会(OICA)による世界全体の新車販売台数(商用車を含む)の推移を見たものですが、順調に伸びており、2017年は前年比3.1%増の9,680万台になりました。この調子で伸びれば2018~2019年に1億台の大台に乗ると予想されます。

 2017年の動きを国別、地域別に見ると(表1)、まず、アメリカの新車販売台数が減少に転じました。アメリカ市場は、リーマンショック後の2009年に大幅減少した後、2010年から順調に販売台数が積み上がってきましたが、2017年はいったん伸びに限界が来たと思われます。ただし、後述のように2018年3月の動きを見ると、再び伸び始めた可能性もあります。

 一方、欧州、中国、インドネシアは堅調です。タイの2017年は前年比13.4%増、将来の自動車大国となることが期待されるインドは同じく前年比9.5%増と順調に伸びました。世界全体の新車販売台数は、アメリカなどが減少しても、欧州、中国、インド、タイなどが増加して減少分を吸収するという形で、順調に伸びています。

グラフ1 世界の新車販売台数

単位:万台、暦年、商用車を含む
出所:国際自動車工業連合会(OICA)より楽天証券作成

表1 各国の新車販売台数

単位:台、%
出所:AUTODATA、各国自動車工業会、日本自動車販売協会連合会などより楽天証券作成

 

2.2018年3月のアメリカ新車販売台数は前年比6.3%増

 国別、地域別に新車販売市場を見ていくと、停滞気味だったアメリカ市場にやや動きがあります。2018年3月のアメリカ新車販売台数は、前年比6.3%増の165万3,529台となりました。この伸び率は、2017年9月の前年比6.1%増以来の高い伸び率です(表1)。

 アメリカの2018年3月の実績を車種別に見ると、乗用車が前年比9.2%減と下げ止まっていませんが、ライトトラック(SUVとピックアップトラック)が同16.3%増と、これも2017年9月の12.4%増を上回る伸びを示しました(表2)。2018年1-3月期に販売奨励金(インセンティブ)を大きく増やしたわけではないようなので、アメリカの景気の良さがライトトラックの増加に反映された可能性があります。グラフ2は、年率換算後のアメリカの乗用車、ライトトラックの販売台数を見たものです。乗用車が下げ止まる気配はありませんが、ライトトラックは順調な伸びが続いているように見えます。

 4月以降も、ライトトラックは頭打ちにならず、一定の伸びが続く可能性があります。乗用車よりもライトトラックのほうが採算が良いため、為替レートの円高を除けば、この傾向はアメリカで活動している日系メーカーの損益にプラスになるはずです。

 メーカー別には、トヨタ自動車、SUBARU、マツダのライトトラックの伸びが目立ちます。トヨタ自動車では乗用車のカローラ、プリウスの前年割れが続き、戦略車種であるカムリ(2017年秋に新型を投入)も伸び悩みの気配がありますが、SUVのRAV4、ハイランダー、ピックアップトラックのタコマ、タンドラが伸びています。特にタコマ、タンドラの伸びが目立ちます(表6-1、表6-2)。

 またマツダでも乗用車は不振ですが、SUVのCX-5(小型SUV)、CX-9(中型SUV)が2017年秋冬から大きな伸びを示しています(表7)。2018年3月はCX-5が前年比90.5%増、CX-9が同20.2%増となり、全体では同35.7%増という2015年10月の35.4%増以来の大きな伸びになりました。

 SUBARUの伸びも大きいですが、これはSUVのクロストレックの新車効果によるものです。

グラフ2 アメリカの新車販売台数(年率換算)

単位:100万台
出所:AUTODATAより楽天証券作成

表2 アメリカの新車販売台数:前年比

出所:AUTODATAより楽天証券作成

 

3.テスラのEV「モデル3」出荷台数が2018年1-3月に大幅増

 自動車の先端分野を見ると、テスラのEV(電気自動車)生産台数、出荷台数が増加しています。4月3日にテスラが出したリリースによれば、テスラ「モデル3」(セダン型EVの普及車種)の生産台数は2017年10-12月期2,425台から2018年1-3月期9,766台へ大きく伸びました。モデル3出荷台数は同じく1,542台から8,180台へこれも大きく伸びました(期末時点で顧客へ向けて輸送中の台数があるため、生産台数と出荷台数には差がある)。

 なお、テスラのリリースによれば、リリース発行前7日間(3月下旬)のモデル3生産台数は2,020台です。3月に急速に生産台数が増えたことになります。この水準が維持できれば、2018年4-6月期のモデル3の生産、出荷台数は1-3月期から大きく増加し、業績も改善する可能性があります。ちなみに、テスラの2017年10-12月期(2017年12月期4Q)は売上高32億8,800万ドル、最終赤字6億7,500万円の大赤字であり、2018年1-3月期も大赤字が続いていると思われますが、4-6月期からは赤字が縮小する可能性があります。当面は、テスラの2018年12月期1Q決算に注目したいと思います(発表日時は未定)。

 モデル3の生産、出荷台数の増加が続けば、現在停滞しているテスラ向けリチウムイオン電池のサプライチェーンが動き出す可能性があります。テスラ製EVに搭載されているリチウムイオン電池は全量をパナソニックが供給しており、ステラケミファ(電解質、添加剤)→三菱ケミカルホールディングス(電解液)、住友化学(セパレーター)、住友金属鉱山(正極材)、日立化成(負極材)の各社が電池材料を供給していると言われています。モデル3の量産は当初計画よりも遅れていますが、遅れながらも前進している模様なので、これら関連企業の業績にも何らかの変化が期待されます。その意味で、パナソニックなどの2018年3月決算の中身と2019年3月期見通しに注目したいと思います。

グラフ3 テスラのEV出荷台数

単位:台
出所:会社資料より楽天証券作成

 

4.自動運転開発会社の技術レベルがわかってきた

 2018年3月18日にライドシェア大手のウーバー・テクノロジーズがアメリカで死亡事故を起こしました。夜間、道路を横切ってきた歩行者を自動運転システムが検知できず、ブレーキもかからず衝突してしまいました。事故の映像が公開されており、事故の原因についてさまざまな意見が出されていますが、結論はまだ出ていません。ただし、この過程で明らかになったことがあります。それは、自動運転を開発している会社間の技術格差です。

 まず、ウーバー車に取り付けられたセンサーの数が少なかったということです。LiDAR(ライダー、レーザー光によるセンサー)が1個だけでしたが、アルファベット(グーグルの親会社)の自動運転開発子会社ウェイモの実験車は6個、GMの実験車は5個のライダーを搭載しています。センサーが少なかったため死角が増えたのではないかと言われています。

 次に、自動運転の試験走行中にAIが判断に迷って運転を人間のドライバーに引き継いだ回数です。報道によれば、ウェイモは5,596マイル(約9,000km)に1回、GMは1,254マイル(約2,000km)に1回、日産自動車は207マイル(約330km)に1回、エヌビディアは5マイル(8km)に1回であり、ウーバーは20kmに1回の関与という同社の目標に達していなかったということです。ちなみに、これも報道によれば、トヨタはウーバーの自動運転システムを導入しようとしていた模様です。

 このように自動運転では、先行した2社、ウェイモ、GMが他社に対して大きく進んでいます。先行2社の技術優位が自動運転レベル3、レベル4の実車搭載が始まる時期まで続くならば、完成車メーカー、自動車部品メーカーは自力で自動運転を開発するよりも、ウェイモやGMから技術導入したほうが安全かも知れません。このことは、特にトヨタ自動車への投資に際して気をつけなければならないことです(トヨタの自動運転に関する技術レベル、目利きの能力は高くないということです)。

 

5.自動車関連株への投資を考える

1)インドに注目したい

 世界全体でみると自動車産業は成長産業と言えますが、中でもインド市場は成長期待が大きい市場です。このインドの乗用車市場で約50%のトップシェア(商用車を入れると35~40%)を持つ、スズキに注目したいと思います。インドの自動車市場が順調に伸びていること、人口の大きさから見て、今の年間400万台市場が将来1,000万台以上の市場になる可能性があること、経済成長に伴って、40~50万円の車から80~100万円以上の車への需要シフトが起こっていることが注目点です。

 インド政府が進めようとしている2030年を目標にしたインドのEV化に対応しなければなりませんが、時間の余裕があります。中長期(6~12カ月以上)での投資妙味が期待できると思われます。

グラフ4 インド新車市場とマルチ・スズキの新車販売台数:前年比

単位:%
出所:マルチ・スズキ資料、インド自動車工業会より楽天証券作成

表3 マルチ・スズキのカテゴリー別新車販売台数(卸売ベース)

単位:台、%
出所:マルチ・スズキ資料より楽天証券作成

 

2)世界の自動車市場拡大に注目するなら大手自動車部品メーカー

 自動車は単価が高いため(乗用車で1台100~200万円以上)、市場も巨大です。完成車だけでなく、自動車部品や付属品の市場も巨大です。例えば、自動車1台に10~20万円のADAS(先進運転支援システム)を付けると、全世界で10~20兆円の市場が新たにできることになります。世界第2位の自動車部品メーカーであるデンソーの年間売上高が約5兆円であることを考えると、自動車の世界はデンソークラスの企業が二桁成長できる市場なのです。自動車部品、自動車関連の電機メーカーにとっても自動車は重要な市場です。

 ただし、単純に新しい部品、機器が付くのではなく、部品の入れ替えが発生した場合には、数兆円の市場が生まれるのと引き換えに数兆円の市場がなくなることもあります。電気自動車が普及して油圧部品が必要なくなれば、電子部品、半導体、モーター、ソフトウェアが油圧部品に取って替わることになるでしょう。自動車部品メーカーに投資する際には、このリスクに気を付ける必要があります。ちなみに、デンソーは電装品が得意なことから、伸びるものが多く減るものが少ない自動車部品メーカーと言えます。

 冒頭で指摘したように、世界の自動車市場は順調に成長しています。完成車メーカーは国や地域によって市場シェアが異なるため、世界市場の成長の恩恵を全ての完成車メーカーが享受できるわけではありませんが、大手自動車部品メーカーは各国の自動車メーカーが顧客であり、業績は世界市場の拡大に連動する部分が多くなります。円高デメリットはありますが、世界市場の成長からデンソーが受け取るメリットは大きいと思われます。

 また、日米欧だけでなく、中国や新興国でも車の電動化が進んでいます(ハイブリッドカーやEVだけではなく、パワーステアリングやパワーウインドウの普及も電動化です)。

 この観点から見ると、世界第2位の自動車部品メーカーであり電装品に強いデンソーに、中長期の投資妙味があると思われます。

 

3)アメリカ新車販売の変化に注目したい

 トヨタ自動車、マツダのアメリカにおけるライトトラック販売が好調なことにも注目したいと思います。

 2018年1-3月期に急速に進んだ円高に対して、日系自動車メーカーのアメリカ新車販売の伸びがどの程度対抗できているのかは、2018年3月期通期決算を見なければ正確にはわかりません。ただし、表4、5で試算したように、円/ドル、円/ユーロの関係だけなら、自動車各社の2018年3月期決算を円高が大きく下押しするものではないと思われます。

 また2019年3月期については、今の為替レートが続けば、トヨタ自動車、本田技研工業、日産自動車、SUBARUに比較的大きな円高デメリットが発生すると予想されます。ただしマツダについては、円/ドル、円/ユーロによる大きなダメージは今のところ考えにくいと思われます。足元で円/ドルレート、円/ユーロレートが若干円安方向に向かっていることも業績上、株価上のポイントです。

 そこで、トヨタ自動車、マツダへの短期投資(2~6カ月)を考えてみたいと思います。ただし、為替動向、2018年3月期決算の中身と2019年3月期見通しに注意する必要があります。

 自動車各社の決算発表スケジュールは以下の通りです(現時点で公表されているもののみ)。

4月27日(金) 本田技研工業、マツダ、デンソー
5月  9日(水) トヨタ自動車、三菱自動車工業
5月10日(木) スズキ
5月11日(金) SUBARU

 

表4 自動車各社に対する為替の影響(試算):2018年3月期

単位:円/ドル、円/ユーロ、億円
出所:会社資料、ヒアリングにより楽天証券作成
注:ドル/円、ユーロ/円の円安メリットのみを試算しており、新興国通貨等その他の通貨の効果は無視した。ただし、スズキの3段目のみインドルピー/円レート

表5 自動車各社に対する為替の影響(試算):2019年3月期

単位:円/ドル、円/ユーロ、億円
出所:会社資料、ヒアリングにより楽天証券作成
注:ドル/円、ユーロ/円の円安メリットのみを試算しており、新興国通貨等その他の通貨の効果は無視した。ただし、スズキの3段目のみインドルピー/円レート

 

<参考>

表6-1 トヨタ自動車-アメリカでの主力車種の販売動向:1

単位:台
出所:TOYOTA USA プレスリリースより楽天証券作成

表6-2 トヨタ自動車-アメリカでの主力車種の販売動向:2

単位:台
出所:TOYOTA USA プレスリリースより楽天証券作成

表7 マツダ:アメリカの車種別新車販売台数

単位:台
出所: Mazda North American Operationsより楽天証券作成

 

本レポートに掲載した銘柄:スズキ(7269)、デンソー(6902)、マツダ(7261)、トヨタ自動車(7203)
 

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