先週の国内株市場は、株価の値動きだけを追いかけると、まさに荒れ模様。週末2月9日(金)の日経平均株価は2万1,382円で取引を終えましたが、前週末終値(2月2日の2万3,274円)からの下げ幅が1,892円と大きかったこともそれを物語っています。臨時のレポートを掲載した2月6日(火)の取引では、日経平均が終値ベースで1,000円以上も下落しました。

 ともあれ、何とか一週間を終えて、ひとまず仕切り直しの時間が与えられたことになります。改めて足元の状況を整理し、今後の見通しのヒントを探って行きたいと思います。

 まずはいつもの通り、日経平均の日足チャートでチェックします。

■図1 日経平均(日足)の動き:2018年2月9日取引終了時点

出所:MARKETSPEEDを元に筆者作成

 ローソク足でポイントになるのは、何と言っても2月6日(火)の取引で、下ヒゲの長い陰線が印象的です。また、200日移動平均線がサポートになっているようにも見えます。形としては、「大きく売り込まれた後、200日移動平均線に近づいたことが意識されて下げ幅を縮小させた」値動きを意味しています。

 なぜ、ここまで一本のローソク足にこだわって説明したかというと、その後の取引が「意外と冷静さを保っていた」かもしれないからです。一般的に、ローソク足の実体は「相場の勢い」を、ヒゲの長さは「揺らいだ気持ち」を表すとされていますが、6日(火)のローソク足を細かく見ていくと、実体の長さが657円、下ヒゲの長さは532円で、両者ともかなりの長さです。つまり、相場が再び上昇に戻すには実体の長さを超えていくことが第一関門となり、反対に下落に向かうのであれば、ヒゲの長さの範囲内に踏みとどまれるかが注目されることになります。

 実際に、その後のローソク足を見ると、7日(水)と8日(木)が6日のローソク足の実体、9日(金)がヒゲの範囲内にほぼ収まっています。7日〜8日は戻りを試したものの上抜けしきれず、9日は下落したとはいえ、ヒゲの範囲内で持ちこたえていました。週末のSQや国内の連休を控えて動きづらかった面があったにしても、荒い値動きの中で淡々と「次の展開」を探っていたことがわかります(下の図2)。

■図2 日経平均のローソク足の並び:2018年2月5日〜9日

出所:筆者作成

 連休明けとなる今週は、先週までの冷静な動きから、情熱的な次の展開に転じることができるかが焦点になりそうですが、仮に戻りを試すにしても、先ほどの6日のローソク足の実体を上抜ける第一関門の後は、「窓」埋めや75日移動平均線という第二・第三の関門が控えています。

「やっぱり上値は重たいのか」となりがちですが、先週末(9日)時点の75日移動平均線(2万2,794円)まで1,400円以上の上値余地があります。戻りを試す動きが出てくれば、十分に利益を狙えるため、素直にその流れに乗るのも悪くないと考えられます。具体的な上値の目処としては、6日ローソク足の終値である2万1,610円、節目の2万2,000円、6日ローソク足の始値である2万2,267円、「窓」埋め完了の2万2,659円辺りが想定されそうです。

 ちなみに、サポートとなっている200日移動平均線ですが、こちらは米株市場でも意識されているようです。先週末(9日)のNYダウやS&P500といった主力株指数は、大きく下落した後に買い戻されて、結局、前日比プラスで終えましたが、この相場反発はS&P500が200日移動平均線にタッチしたことがきっかけになっています(下の図3)。


■図3 S&P500(日足)の動き:2018年2月9日取引終了時点

出所:MARKETSPEED for Macを元に筆者作成


 200日移動平均線は、日本ではあまり注目されることはあまり多くないのですが、米国では結構重要視されています。「グランビルの法則」と呼ばれている、株価と移動平均線との位置関係で売買タイミングを計る有名な分析手法は米国生まれですが、その生みの親であるジョセフ・グランビルの著書では、200日移動平均を重視していることが影響しているのかもしれません。

 日米ともに200日移動平均線がサポートとして意識されている分、ココを下抜けしてしまうと、下げが加速する可能性があり、一応注意しておく必要があります。さらに、先週末(9日)時点の200日移動平均線(2万1,003円)はちょうど2万1,000円水準でもあります。

 それを踏まえて、最後に週足チャートを見ていきます(下の図4)。

■図4 日経平均(週足)の動き:2018年2月9日取引終了時点

出所:MARKETSPEEDを元に筆者作成

 

 図に描かれているトレンドラインは、「トリプルボトム崩れ」の安値同士を結んだものです。日経平均はこのラインをはさんで、強気と弱気の展開を繰り返してきましたが、先週の急落で弱気ゾーンに入ったことになります。ただ、下値は26週移動平均線や52週移動平均線がサポートとして機能しているほか、下値自体も切り上がっています。6日の臨時レポートでも紹介しましたが、足元の株価急落で相場のムードが悪化したのは間違いないものの、中期的にはまだ相場が崩れていないという見方に変更はなさそうです。

 ただし、先ほど200日移動平均線のところで紹介した2万1,000円の水準ですが、2015年の夏場に上昇トレンドから下落トレンドに転じた株価水準でもありました。そのため、この水準を下回ることが心理的な意味合いを持つ可能性も考えられ、頭の片隅に置いておく必要があると言えます。

 今週は相場急落からの反動高があってもおかしくはないものの、米国の金利上昇や為替動向への警戒が続いているほか、これまでの買い材料が売りのきっかけに転じたこともあって、中期的なストーリーが描きにくく、戻りは限定的に留まりやすいと思われます。もはや「あの頃」の適温相場に戻るのは難しく、新たな相場への見極めが進むまでは、「方向感は出ないが上下の振れ幅は大きい」値動きが続く可能性が高いと思われます。短期的な株価の上げ下げを捉えて利益を狙うのであれば面白い局面と考えられますが、中期的な押し目買いを狙うのであれば、タイミングが少し難しい状況かもしれません。