ビジネスモデルの変容によってIFAが増加

 そもそも、なぜアメリカでIFAが発展したかという理由は様々あるが、1つのきっかけとして、1990年代に証券ビジネスモデルが売買のたびに手数料が掛かる“コミッション”ベースから、顧客の資産残高に対して手数料が掛かる“フィー”ベースへと変容したことが挙げられるという。

 アメリカでも数十年前まで、証券会社やIFAが顧客に投資のアドバイスをする際に、株式・投資信託などの金融商品を売買する時の手数料であるコミッションで収入を得ていた。しかし、コミッションベースのビジネスでは、業者が利益を得るために顧客に短期で売買を繰り返させることがある。これでは顧客のためにならないと米国証券取引委員会(SEC)が問題提起したこともあり、顧客の資産残高に従って手数料を得るというフィーベースのビジネスが主流となっていった。

 フィーベースであれば、顧客の資産残高が増えれば証券会社やIFAの収入が増え、資産残高が減れば収入が減ることになることから、互いの利益が一致する。

 このビジネスモデルが浸透していった米国では、お金を払ってでも運用アドバイスがほしいという顧客からのニーズが高まり、またIFAも地域に密着して長年顧客との信頼を築いていくことにより、現在のようにIFAの利用が発展していったのではないかと考えられているのだとか。

「現在の日本ではIFAが3000~4000人と少しずつ増えるとともに、ようやくフィーベースへの流れが出てきているのではないでしょうか」

 

新しい技術が追い風

 米国でETFが伸びている背景には、ロボアドといった新しいフィンテックの発展も挙げられる。ロボアドとはインターネットを通じて様々な質問に答えることで、顧客に合った資産配分を提案、運用してくれるサービスのこと。米国ではこのロボアドが運用にあたって、主に使っているのがコストの安いETFだ。

「米国ではミレニアルと呼ばれる、1980年代から1990年代に生まれた世代などによるロボアドの利用が増加しています。特に今まで投資をしてこなかった人が、ロボアドをきっかけとして資産形成を始めるという予測もあります。日本でもこうした新しい技術が国民の”貯蓄から資産形成へ”の起爆剤になる可能性があると思います」

 日本のETF市場は米国に比べるとまだまだこれから。最近では新しいアセットクラスとして国内債券が登場し、2018年夏にはマーケットメイカー制度が導入されて取引所での売買がしやすくなる予定だ。国内のETF市場やロボアドがもっと発展して投資家の選択肢が増えていけば、”貯蓄から資産形成へ”の流れも進んでいくことだろう。(有竹亮介/verb)

 

(識者プロフィール)

杉田 浩治
日本証券経済研究所特任リサーチ・フェロー。1961年野村證券投資信託委託(現・野村アセットマネジメント)に入社。その後、日本投資信託制度研究所取締役、投資信託協会参事を経て、2006年から日本証券経済研究所に所属。

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