前回日本における仮想通貨対策を見てきましたが、世界ではどのような措置をとっているのでしょうか。

中国の厳しい規制。でも需要大

 日本でも大きな話題となりましたが、2017年9月、中国は自国内での仮想通貨取引を全面的に禁止することを決定、10月には仮想通貨取引所も業務停止となりました。中央銀行による取引停止の通達文書では「経済と金融秩序を破壊した」という厳しい言葉が使われ、仮想通貨取引は「違法」であると明言されています。

 今後、仮想通貨への法整備が整った後、取引所の営業を再開するのではとの見方もありますが、現時点では不透明です。その一方で、中国国内のビットコイン需要は依然として強く、現在ほとんどの投資家がオフショア口座(海外に所有する銀行口座)を通して取引を行ったり、P2P(取引所を介さない個人間のビットコイン取引)を行っていると見られます。

 

米国では消費者保護を優先

 米国は現在、国として公式な立場での規制は行っていませんが、米国財務省に仮想通貨を注視するワーキンググループを作り、ビットコインや仮想通貨の違法使用がないかどうかを注意深く見ていると米国財務長官が発言。取引所に対しては、利用者が取引を行う際に身分登録を必須とするルール作りが行われるなど、監視を強化する方向へ進んでいます。

 その流れの中、米国上院司法委員会が企業及び個人のビットコイン保有者に対する法案の成立を目指しています。その内容は、ビットコイン保有者のビットコイン保持数の政府への報告の義務付けです。意図的に報告を怠った場合は罰則が課せされます。仮想通貨の安全な取引を目指した、利用者(消費者)保護の目的での法案といわれていますが、プライバシー侵害への拒否反応を伴った強い反発も予想されており、この法案の成否にも要注目です。

 また先日、米国ではビットコインに関する大きなニュースがありました。ビットコイン先物の上場です。世界最大規模のデリバティブ取引所であるCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)グループとCBOE(シカゴ・オプション取引所)への上場です。政府お墨付きの取引所での取り扱い開始は、購入を考える人々に仮想通貨市場に対する安心感を与えることになりそうです。

 

EUやシンガポールは監視の姿勢

 EUの欧州会議は、法令順守を前提としながら、2017年3月にビットコイン保有者の情報登録と取引監視を義務付ける法案を作成し、資金洗浄やテロ資金供与に仮想通貨が利用されていないかの監視体制を敷いています。ただ、具体的な規制や取引停止等の措置はとっていません。

 シンガポールも同様に国としての規制は行わず、まずは前提として法令順守、取引については監視体制を敷き犯罪リスクを見極め、それに応じた対策をとっていくとしています。シンガポールは自国通貨の電子化を進め、特区でレギュラトリー・サンドボックス(現行の法律が想定してない革新的な商品やサービスに対して適用される規制緩和)を設け、フィンテックを推進中。ビットコインや仮想通貨といった新しい技術・事業への姿勢は柔軟です。

 

監視と法整備の行方

 その他、ほとんどの国々がビットコイン及び仮想通貨に対して「規制はしないが違法行為がないか監視する」という姿勢ですが、ロシアとジンバブエは取引禁止措置をとっています。

 広がり続ける仮想通貨市場は、各国政府も無視や放置はできない状況になっています。これからの利用者増を見据え健全な市場環境を整えるという名分において、それぞれの国が今後も監視強化へと進むことが予想されますが、この流れが市場に与える影響を注視していく必要があります。