先週の国内株市場を振り返ると、週末12月15日(金)の日経平均は2万2,553円で取引を終えました。前週末の終値(2万2,811円)からは258円の下げ幅を見せ、週足ベースでも2週連続の下落となりました。相場が大きく崩れた印象はないのですが、積極的に上値を追っていくような買いが入るわけでもなく、微妙な雰囲気が漂っています。

 何はともあれ、下の図1で足元の相場状況を確認していきます。

■(図1)日経平均(日足)の動き (2017年12月15日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDを元に筆者作成

 

 先週の日経平均の値動きは、「上昇後に下落」という足取りでした。節目の2万3,000円台に乗せることができずに失速していった格好です。ローソク足の形も、週初の月曜日(12月11日)以外は全て陰線になっています。

 また、日経平均は「三角保ち合い」を形成しつつあり、保ち合いを上抜けてくると、年末株高への期待も高まる旨を前回のレポートで紹介しました。いわゆる「保ち合い放れ」と呼ばれ、保ち合いを抜けた方向にトレンドが出やすいというサインなのですが、先週の週初はまさに保ち合いの上抜けでのスタートでした。が、その後の買いが続かず、結局は保ち合い上限の線に沿って下落していくことになりました。

「買い」と思われるサインが機能しなかったことで、本来は相場のムードがもっと悪くなってもおかしくはないのですが、週末15日(金)の取引では25日移動平均線がサポートになるなど、相場の底堅さも感じられます。さらに、日々の取引時間中の動きを細かく見て行くと、株価が下がった日でも、取引時間中には時折プラスに転じる場面も多くなっています(下の図2)。

■(図2)日経平均のTickチャート(2017年12月11日〜15日)

出所:MARKETSPEEDを元に筆者作成

 

 とりわけ、15日(金)の取引においては、途中200円近く下落していたにもかかわらず、プラス圏まで株価を戻す動きを見せたのは印象的です(その後は再び下げてしまいましたが…)。もっとも、日銀によるETF(上場投資信託)買いの思惑などが働いている面はあるものの、売りの方向に大きく傾かないところが、冒頭でも触れた相場の微妙な雰囲気に繋がっているのかもしれません。ちなみに、先週は11日(月)、14日(木)、15日(金)にそれぞれ708億円ずつ日銀が株価指数連動型ETFを買い入れています。

 また、「2万3,000円の壁」を指摘する声も多く聞かれるため、これについても確認していきます。

 ポイントになるのは、図1のチャートでもひときわ目立っている11月9日のローソク足です。この日を境に日経平均の調整局面が始まったわけですが、注目するのはローソク足の形そのものです。短めの陰線に上下への長いヒゲが特徴的です。

 一般的に、ローソク足の実体(箱に見える部分)は相場の強さ、ヒゲは揺らいだ気持ちを表すとされています。11月9日のローソク足は、「終わってみれば小幅安だったが、上方向にも下方向にも揺らいだ気持ちが強く、どちらに株価が転んでもおかしくない」ことを意味しています。その後に下方向への調整を見せたことはご存知の通りです。

 そして、株価が再び上方向へ戻り基調を描き始めたわけですが、2万3,000円のところで二度にわたって跳ね返されています。これが2万3,000円の壁と呼ばれるもので、最初が12月1日、二度目が12月12日です。なお、両日とも高値は2万2,994円なのですが、ここで思い出していただきたいのは、11月9日のローソク足で、実体の上限(始値)は2万2,989円とほぼ2万3,000円水準であることです。

 つまり、日経平均が2万3,000円台に乗せるということは、株価水準の単なる節目を突破するだけでなく、11月9日のローソク足における「上方向に揺らいだ気持ち」のゾーンに足を踏み入れることでもあるわけで、思っている以上に大きな意味を持っていると考えられます。

 今週の国内株市場ですが、懸案だった米国の税制改革法案が可決に向けて前進したことで、先週末の米株市場が揃って史上最高値を更新しており、この流れを引き継げば株価の戻りをうかがうスタートが想定されます。ただ、クリスマス休暇による細商いが予想される中で継続的に上値を追う勢いは出にくいと考えられ、個別の材料に反応する動きが中心となりそうです。

 今週予定されている日銀会合についても、出口戦略について踏み込んだ発言等がなければ無風で通過する見込みですし、個別材料としては、ビットコインの先物取引がCME(シカゴマーカンタイル取引所)で開始されるほか、先週から始まった携帯通信株の下落が止まるかどうか、ラッシュが続くIPO(新規株式公開)の動向、中国で開催される予定の中央経済工作会議、上野動物園でのパンダ(香香)の一般公開などが挙げられます。基本的にはこれまで通り、レンジ相場の継続がメインシナリオになりそうです。

 なお、トレンドの変化を探る意味ではTOPIXの動きが意外と重要かもしれません。下の図3はTOPIXの平均足とMACD(移動平均収束発散法)の推移です。

■(図3)TOPIXとMACD(日足)の動き (2017年12月15日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDを元に筆者作成

 

 これまでにも何度か紹介したことがありますが、この平均足とMACDの組み合わせは、比較的簡単にトレンドの変化を探ることができます。具体的には、平均足の陽転や陰転に加えて、MACDがシグナルを交差するかを見ていきます。

 あらためて図3を見ると、足元のTOPIXの平均足は陰転しています。一方、下段を見ると、MACDがシグナルを下抜けしそうな形になっています。実際に下抜けしてしまうと、下落トレンド入りの可能性が浮上してきますので、一応注意して見ておく必要がありそうです。