荒い値動きが印象的だった先週の国内株市場ですが、週末12月8日(金)の日経平均終値は2万2,811円となりました。前週末の終値(2万2,819円)からは8円安で、3週連続の上昇達成にはわずかに届きませんでしたが、週半ばの6日(水)に今年最大の下げ幅を見せる場面があったことを考えれば、しっかりした展開だったと言えます。

■図1 日経平均(日足)の動き:2017年12月8日取引終了時点

出所:MARKETSPEEDを元に筆者作成

 

 まずは上の図1で、足元の状況を確認します。

 先週の日経平均の値動きをローソク足でたどっていくと、「3日間下落した後に2日間で戻す」足取りになっていますが、とりわけ、下落で目立ったのは冒頭でも触れた12月6日(水)の取引です。

 この日は前日比で445円安となり、これまでサポートとして機能してきた25日移動平均線も大きく下回る陰線となったことで、下方向への警戒ムードがにわかに高まりました。翌7日(木)の取引には、すぐさま反発を見せたのですが、今度はその25日移動平均線が上値を抑える格好となったため、直ちに警戒ムードを解くことはできませんでした。

 ただし、週末8日(金)が「窓」を空けて上昇し、25日移動平均線も飛び越えるような格好で上抜けたことで相場が崩れずに済みました。良くも悪くも、この日の取引に救われたと言えます。

 そのため、今週の日経平均が直近高値どうし(11月9日と12月1日)を結んだ線を上抜けることができるかが今週の焦点のひとつになります。実は、この直近高値どうしを結んだ線は思ったよりも大きな意味を持っています。

 少し観察する期間を伸ばしてみると、先月(11月9日)を境にして始まった調整局面は、「下落しては戻す」パターンを繰り返していると見ることができます(下の図2)。最初のパターンは11月9日から12月1日の間に現れ、そして先週の値動きがまさに次に現れた2回目のパターンに相当します。最初と2回目のパターンを比べると、次第に値幅が狭く、期間も短くなっていることから、いわゆる「(三角)保ち合い」を形成しつつあると言えます。

■図2 日経平均(日足)の動き その2:2017年12月8日取引終了時点

出所:MARKETSPEEDを元に筆者作成

 

 結果的に、前回も紹介した中期的なトレンド判断の目安となるレンジ内での推移が続くという見方には変わりはありませんが、その中で保ち合いの形成が見られたことは、市場のエネルギーが蓄積されることを意味するため、レンジの突破もそろそろ想定されはじめるころなのかもしれません。ちなみに、先週末終値からのレンジ幅の距離はそれぞれ、上限までが571円ほど、下限までは839円ほどです。

 なお、同じ視点でTOPIXを眺めてみると、こちらは週足で上昇しているほか、12月8日(金)の取引で直近高値どうしを結んだ線を上抜けており、保ち合いを上放れる格好になっていて、このことは明るい材料と言えます。

■図3 TOPIX(日足)の動き その2:2017年12月8日取引終了時点

出所:MARKETSPEEDを元に筆者作成

 

 ただし、今週の日経平均やTOPIXは上方向への勢いは出にくく、株価が上昇したとしても、ジワリと戻りを試すような値動きがメインシナリオとして想定されます。

 その理由のひとつがイベントの多さです。今週は利上げが注目されている米FOMC(米連邦公開市場委員会)をはじめ、ECB(欧州中央銀行)理事会や中国の経済指標発表も控えています。国内に目を向ければ、法人景気予測調査や日銀短観などの国内企業の景況感を探るデータも公表予定です。この他にも北朝鮮や中東などの地政学的情勢も加わり、注目材料が多過ぎることがかえって、相場が動きづらくさせることが考えられます。

 また、新興株市場に資金が向かうシナリオが描けるのも理由のひとつです。12月は国内IPOがラッシュと言えるほど多く予定されているのですが、今週からその動きが本格化するタイミングとなります。そのため、主力株市場のこう着感が強まる展開となれば、マザーズやJASDAQなどの新興株市場に資金が向かう可能性が出てきます。

 最後に波乱要因として注意しておきたいのが、「リスクに鈍感な米国市場」と「引き締め警戒の中国市場」です。

 とりわけ要警戒なのが米国で、先週、トランプ大統領がイスラエルの首都をエルサレムと認定し、大使館も移転すると表明したことをきっかけに中東情勢への不安が高まりました。これにより、日本株も大きく下落したわけですが、週末の米株市場の動きをみると、NYダウやS&P500などが終値ベースの過去最高値を更新しています。

 もちろん、米景気の拡大が続いていることや税制改革法案の進展期待、連邦予算の期限に関するつなぎ案が可決されたことなど、株が買われる理由はあるのですが、リスク材料に対して反応しなさ過ぎる点が気になります。現時点ではあまり確率は高くはないものの、突如として米株市場が調整局面を迎える展開には警戒しておいたほうが良さそうです。