年金は払っていても、それだけで老後も安心な保証はないし、一つの会社で働き続けても、賃金が大幅に上がる可能性は…。そんな現代において、ますます投資に興味を抱いている人は多いはずだ。しかし、「投資はお金に余裕がある人がするもの」というイメージからか、投資を遠ざけてしまう人もいるだろう。

 実は、東京証券取引所が行った「ETF市場調査の結果報告書」(調査対象:20歳以上の男女2万名(本調査:2,691名)、調査時期:2017年7月21日~31日、調査協力:マクロミル)によって、現在金融商品に投資している一般投資家も、富裕層ばかりではないことが見えてきた。

 調査結果とともに、一般投資家の実情を紐解いていこう。

 

ひと月10分、1万円~でも投資家になれる!?

 投資家というと、四六時中パソコンやスマホに張り付き、株価や指数をチェックしているイメージがあるかもしれない。しかし、一般投資家に「ひと月に投資に費やせる時間」を聞いたところ、「10分未満」が30%ともっとも多かったのだ。中には「5時間以上」(14%)という人もいたが、61%は「1時間未満」という結果に。

 一般投資家の年間で投資に費やせる金額では、多かったのが「50万円以上100万円未満」の22%。「500万円以上」が11%と高額投資を行っている人がいる一方で、「50万円未満」と答えた人が34%。少額で投資をしている人も多いことが分かった。月に1~3万円程度であれば、一般的なビジネスマンでも捻出できない額ではないだろう。

 これら2つのデータだけでも、“投資=時間やお金に余裕がなければできないもの”というわけではないことが見えてくる。

 

経験者はコスト、未経験者はリスクを重視

 同調査では、「一般投資家」と、投資に興味はあるものの金融商品に投資をしたことがない「投資関心層」とに分類して、それぞれの投資に対する考え方も比較している。

 まずは、投資期間に関する意識。一般投資家は3年以上の「中長期」で運用しようと考えている人が62%いたが、投資関心層では「中長期」で想定している人の割合が48%。未経験者ほど、短期で結果を出さなければならないと考えがちのようだ。

 続いて、年間で投資に費やせる金額を聞く質問では、一般投資家の平均は「218万円」だが、投資関心層は「43万円」となった。投資にあと一歩踏み出せないのは、投資に費やせる金額が少ないからと考えているのかもしれない。

 最近では、投資信託を100円からでも投資できる金融機関も出てきているほか、おつりで投資するサービスも登場しており、少額から投資ができる環境は整いつつある。まとまったお金で投資を始める必要はなく、少額から徐々に肩慣らししていくのも良いかもしれない。

 投資において重視するポイントでは、それぞれ以下のようなランキングとなった(「とても重視する」=2pt、「重視する」=1ptでポイント化して計算)。

■一般投資家

■投資関心層

 1位が違うところがポイントだろう。手数料といったコストを重視する一般投資家に比べ、投資関心層は元本割れになるリスクに不安感を抱いている。リターンを得るためには相応のリスクが必要、ということに馴染みがないということだろう。

 一方、一般投資家は、投資には一定のリスクが付いてくるものであること、リスクは上手に付き合うことでコントロールできることなどをある程度理解しており、そのうえで投資のパフォーマンスを上げるために手数料といったコストを重視しているといえそうだ。

 このように、投資経験者と未経験者では特に投資に対する意識に違いが見えた。投資を経験することで、リスク・リターンやコストについて、身をもって体感できるからだろう。投資に躊躇している人は、まずは少額からでも始めてみることで、ぐっと視野が広がるかもしれない。(有竹亮介/verb)