株価が割安に見えるなら積極的に買えるのか?

 では(1)に該当する株価が割安に見える銘柄であれば、積極的に買ってもよいのでしょうか?
 筆者はそうは思いません。その理由は以下のとおりです。


(ア)業績から見て株価が割安「に見える」だけであり、本当に割安かどうかはわからない

(イ)業績からみて本当に株価が割安であっても、積極的に買われなければ株価は上昇しない

 まずは(ア)についてです。出遅れ銘柄が割安かどうかの基準としては、PERやPBR(株価純資産倍率)、配当利回りなどの各種指標を用いて判定します。

 しかし、PER1つとっても、PERが低ければ無条件に株価が割安、というわけではありません。たとえば今後の業績が現時点よりさらに悪化すると市場参加者が予測しているなら、PER10倍割れでも株価は割高、という可能性も少なくありません。

「PERが10倍割れなら割安」というのはあくまでも一般論に過ぎないのです。そして(イ)については、自分の力ではどうしようもないため、株価が上昇するのを待つほかありません。

 

割安に見える銘柄が本当に「割安」なのか、正確に見極められますか?

 そして悩ましいのが、出遅れ銘柄の株価が上昇しないのが(ア)の理由によるものか、(イ)の理由によるものか、個人投資家が分析・判断することは非常に困難であるということ。
 もし自分自身が(イ)の理由により株価が出遅れていると思っても、本当の理由が(ア)であれば、株価は出遅れではなく逆にさらに値下がりする可能性もあるわけです。

 最近、多くの銘柄の株価が上昇していく中ほとんど横ばいで推移している銘柄が、決算発表などを機に大きく下落してしまうという光景をよく見かけます。
 この横ばいで推移している間のPERや配当利回りなどをみると、割安といわれている水準に株価が放置されていることも多いです。でもそれは、割安に「見える」だけであり、本当は割安ではなかったのです。

 

結局は株価のトレンドに従って行動するのが安全

 多くの銘柄の株価が上昇しているにもかかわらず横ばいに近い状態で推移している銘柄は、割安なのではなく業績面で不安があるから買われていない、という可能性が高いです。

 そして株価が上昇していない銘柄は、当然ながら株価のトレンドも上昇トレンドになっていません。

 個人投資家は、プロと比べると企業のファンダメンタル分析にはどうしても限界があります。この会社は割安だ!と思って投資しても、ふたを開けたら決算発表で悪い数字が出て株価急落、ということもあります。

 そこで株価のトレンドを重視することが、リスク軽減につながると筆者は思っています。株価が上昇トレンドにあればプロをはじめ他の投資家も買っている可能性が高いと考え、自分も買っていきます。逆に株価が下降トレンドとなれば、他の投資家が売っている可能性が高いので自分も売る、というようにです。

 もちろんこの方法で必ずうまく行くとは限りませんが、精度の低い個人投資家のファンダメンタル分析を過信した結果失敗してしまうことを減らすことができます。

 株価が出遅れているから安心、というのではなく、株価が出遅れているのには何か原因があるはずだ、と懐疑的に思っていれば、「出遅れ銘柄」のワナにはまることもありません。

 そのうえで、そうした銘柄が買われて上昇トレンドになれば、プロをはじめ他の投資家からの資金が入り始めたことを意味しますから、その時点で買いはじめればよいと思います。