執筆:窪田真之
30日の日経平均は、前週末比で233円上昇して17,068円となりました。1ドル111円台まで円安が進んだことが好感されました。米景気回復を示す指標の発表が続いたこと、イエレンFRB議長が27日の討論会で「数ヶ月以内の利上げが適切」と発言したことがドル高(円安)材料となり、安倍首相が消費増税延期を表明したことが円安(ドル高)材料となりました。なお、31日の日本時間午前6時現在、為替は1ドル111.13円です。
(1)日経平均は三角もち合いの上値抵抗線まで上昇
日経平均週足:2015年1月4日―2016年5月30日
上の週足チャートをご覧ください。先週までは、日経平均は三角もち合いを形成し、16,500-17,000円を中心としたボックス圏に収束しつつありました。ただし、30日に日経平均は17,068円まで上昇し、三角もち合いを上へ抜けるか否か、重要ポイントに差し掛かっています。
ここを上へ抜けると、次の上値メドは17,572円(4月22日の高値:4月はここまで上昇し、翌営業日の後場から急落)となります。ただし、出来高が低水準で、すぐに上値を追っていくのは困難と考えられます。大勢、17,000円を中心としたボックス圏が続く中、少しずつ下値を切り上げていく展開となりそうです。
(2)今ある強弱材料を整理
一番重要なのは、米利上げと為替の行方です。米利上げが6月か7月に実現し、さらなる円安が進み、日経平均が一段高になる期待が出てきています。ただし、1つ注意すべきことがあります。米利上げは、世界の金融市場にとって悪材料となることです。米利上げを嫌気して世界的に株が大きく下がってしまうと、日経平均も外国人の売りで急反落する可能性があります。
そこを含めて、今ある主な強弱材料を、以下の通り、整理しました。
強材料
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米景気回復、利上げ見通し復活で、円安(ドル高)が進行
1-3月に失速した米景気が4月から回復。6-7月にも米利上げありうるという思惑が復活し1ドル111円台まで円安(ドル高)が進みました。 -
原油価格が上昇
資源安ショックで悪化した世界景気に回復の芽が出ています。 -
景気対策実施への期待
近く5~10兆円の景気対策(財政出動)の発表が見込まれます。また、来年4月に予定されている消費増税の延期が正式に発表される見込みです。ただし、日銀が追加緩和を行う期待はやや低下しています。 -
中国景気持ち直しへの期待
10-12月に悪化した中国景気は、1月から持ち直しています。構造問題は手付かずですが、公共投資を増やすことで、中国景気は目先堅調に推移する可能性もあります。
弱材料
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米利上げの思惑復活で、世界的に株が調整する懸念
米利上げへの警戒感から、世界的に株が大きく下がれば、日本株にも外国人の売りが波及する懸念があります。 -
原油反落の懸念
6月2日にウイーンでOPEC総会が開かれます。サウジアラビアとイランが反目しているために、原油増産凍結で合意するのは困難です。中東原油の増産懸念が高まると、原油が反落する懸念があります。 -
日本の景気・企業業績の失速
景気・企業業績とも、低空飛行が続いています。 -
中国の構造問題
足元の中国景気は、公共投資の積み増しで持ち直していますが、構造問題は手付かずです。中国景気がいずれ失速する懸念は払拭できません。 -
米国の変質
米大統領選で、反グローバル主義・反資本主義の過激発言を続けるドナルド・トランプ氏の人気が高いことが、世界経済にとって懸念材料となっています。