最近、騰落レシオを引き合いに出して「市場が過熱している」という解説を新聞でよく見るようになりましたが、私は、今の騰落レシオは市場の実態を表していないと思います。
(1)騰落レシオは市場の過熱感をはかるテクニカル指標の1つ
「騰落レシオ」の意味は、レポートの最後に詳しく説明いたしますが、まずは、以下のグラフをご覧ください。
<日経平均と東証一部騰落レシオの推移>2012年1月~2014年6月
一般的に、騰落レシオが120%を超えると、市場は過熱し始めているといわれます。騰落レシオが140%を超えると相場は過熱していて天井が近いといわれます。現在、騰落レシオは150%に達しています。果たして、相場は過熱していて天井が近いと解釈するべきなのでしょうか?
まず、事実認識しましょう。騰落レシオは、相場の短期予想に使うには、あまりに当たらない指標です。過去2年半の騰落レシオ推移と、日経平均の動きを比較した、上のグラフを見てください。騰落レシオが140%を超えたことが3回あります。1回目が黒い○(A)、2回目が赤い○(B)、3回目が緑の○(C)で示しています。そこで、日経平均を売ったらどうなっていたでしょう。
1回目のAで売ったら大失敗です。その直後に日経平均は急騰しているからです。一方2回目のBでの売りはドンピシャです。その直後に日経平均は急落しています。3回目が現在Cの箇所です。
(2)26週移動平均線からの乖離で見ると、今の株式市場に過熱感はない
市場の過熱感をはかる指標は、騰落レシオ以外にもいろいろあります。たとえば、移動平均線からの乖離率を見るという方法もあります。日経平均の短期的上昇率が高いと、移動平均線からの上方乖離率が拡大します。上方乖離率が高いことが、過熱のシグナルとなるわけです。
過去2年半の日経平均について、26週移動平均線との乖離率を使って分析すると、おもしろいことがわかります。現在の日経平均にはまったく過熱感がありません。
<日経平均の26週移動平均線との乖離率>2012年1月~2014年6月25日
騰落レシオが最初に140%を超えたところ(D)では、移動平均線からの上方乖離率が15%に拡大してやや過熱感が出始めているところでした。次に騰落レシオが140%を越えたところ(E)では、移動平均線との乖離が30%に近づいており、相場の過熱が示されています。
現在(F)は、騰落レシオが140%を超えていても、移動平均線との乖離で見ると、相場に過熱感はまったくありません。
テクニカル指標は、見方・使い方を間違えなければ役に立つものです。1つだけの指標で判断するのは望ましくなく、複数の指標を同時に見るべきです。B及びEの箇所では、複数のテクニカル指標が同時に過熱を示しているので、売り判断ができます。ところが現在の、C及びFの箇所は、株式相場は膠着してきており、騰落レシオで見た過熱感は、実態をあらわしていないと思います。
<参考>東証一部の騰落レシオ(25日移動平均)とは
東証一部上場銘柄の値上がり銘柄数を、値下がり銘柄数で割ったものを、騰落レシオといいます。過去25営業日の騰落レシオの平均が、騰落レシオ(25日移動平均)です。
騰落レシオは、小型株の影響を受けやすい傾向があります。小型株の値上がりが多いと、相場全体が過熱していなくても、騰落レシオは跳ね上がります。今がその状態です。
一方、大型株中心の相場上昇では、相場全体が過熱していても、騰落レシオは上昇しにくい傾向があります。
騰落レシオは、特有のクセをよく理解したうえで、他のテクニカル指標とあわせて使うべきです。