どうなる?大統領選挙結果のシナリオ別米国株見通し

 なお、1933年以降の大統領選挙結果と株価(S&P500)の相関を振り返る経験則によると、「民主党大統領で連邦議会がねじれる(上下両院議会のうちの一方を共和党が過半を占めた)場合」に最も株高だった(S&P500のリターンが高かった)ことが知られています。

 これは、民主党大統領が掲げる増税案が「ねじれ議会」で承認されにくく、財政政策が変わらない状況に市場が安堵(あんど)してきたとの説が有力です。

 11月5日の同日に行われる連邦議会選挙に向けた最新の支持率調査(Real Clear Politics/10月5日)によると、「上院議会選挙(100議席のうち34議席改選)」については共和党獲得議席数予想が50、民主党獲得議席数予想が45(残り5議席はToss Up(拮抗:どちらに転ぶか不明))。

「下院議会選挙(435議席全て改選)」についても共和党獲得議席数予想が207、民主党獲得議席数予想が196(残り32議席はToss Up)と「やや共和党が優勢」と見込まれています。

「火事は最初の5分、選挙は最後までの5分が大切」との格言通り、米国の大統領選挙や議会選挙も土壇場(投票箱が閉められる)まで選挙結果は不確実です。筆者のメインシナリオは「初の女性大統領誕生(ハリス当選)+ねじれ議会」です。

 そうなれば選挙直後に不確実性が後退して株式相場は年末高及び来年を通じた「ハネムーンラリー」(清新な大統領誕生に対するお祝儀相場)をたどっていく軌道を期待しています。

 特に、トランプ候補が声高に「不法移民排除」を訴える一方、ハリス候補は「移民の合法的受け入れ継続」を訴えている現実的な寛容性に注目しています。米国の労働人口増勢、イノベーション(技術革新)進展、インフレ抑制への移民(移民2世・3世を含む)の寄与度を軽視すべきではないと考えるからです。

 なお、カリフォルニア州を地元にするハリス候補は9月25日の演説で、「AI、バイオ、クリーンテクノロジー、航空宇宙、量子コンピューティングなど先端分野の国内拠点づくり促進」を訴えました。ハリス当選の場合、こうしたテック関連銘柄が相対的に物色される可能性が高いと予想しています。

 一方、「トランプ候補が当選して大統領に返り咲く場合」もしくは「トランプ候補が僅差で落選して同氏が再び敗北を認めず全米で抗議活動や暴動が広がり社会の分断と混迷が深まる場合」をリスクシナリオに想定しています。

 こうしたリスクシナリオが示現する場合、相場がいったん波乱含みとなる可能性に要警戒です。ただ、「トランプ返り咲き」が決まる場合でも、前大統領は中国、ロシア、北朝鮮との「ディール外交」を得意(?)にし、「ウクライナ戦争を即時停戦に導く」と豪語しています。

 伝統的な共和党路線に沿い各種減税策やインフラ整備など国内投資拡大、雇用拡大、規制緩和に前向きです。選挙終了後の株式相場は改めて金利や景気の方向感を見極める動きに回帰していくと見込んでいます。

 実際に振り返ると、2016年の「トランプ当選」に市場はいったん驚きましたが、その後の米国市場は2017年(トランプ大統領就任年)にかけて債券金利上昇、ドル高、株高が進んだ実績があることには留意したいところです。

 なお、大統領選挙を巡る相場変動についても、長期市場実績の観点で振り返ると「短期的ノイズ(一時的なリスク要因)にしか過ぎなかった」との冷めた大局観もあります。冷静かつ長期視点の投資姿勢を維持することが大切と考えています。

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