2024年8月5日に日経平均株価が歴史的な下落を記録するなど、株式市場が荒れています。日本の中央銀行である日本銀行が政策金利を引き上げ、米国で景気後退懸念がにわかに台頭していることが株価暴落の引き金です。

 9月優待株に関しても、多くの銘柄が急落し、株価が落ち着くまで時間がかかりそうです。特に為替市場で急速な円高が進んでいることもあり、海外で収益を上げる外需企業や円高で訪日外国人の消費落ち込みが不安視されるインバウンド(訪日外国人)関連の内需株などは不安定な値動きが続くかもしれません。

 ただ、好業績にもかかわらず全体相場の悪化で株価がツレ安している9月優待株に関してはある意味、割安で仕込めるチャンスと考えることもできます。

 長期的な株価チャートをよく見て、過去に株価が下げ止まった価格帯などを調べ、全体相場の動向にも細心の注意を払った上で優待株投資を行いましょう。

家計にうれしい高額日用品系優待で長期保有向きの有望銘柄は?

 2024年6月の生鮮食品を除く全国消費者物価指数は前年同月比で2.6%の上昇と、5月の2.5%上昇から伸び率が加速。物価高は家計にとって悩みの種です。

 厚生労働省が発表する毎月勤労統計調査によると、2024年5月の物価変動を考慮した実質賃金は前年同月比1.4%減。26カ月連続でマイナスが続いています。

 そんな今、生活費削減に役立つ日用品が贈呈される優待株に対するニーズが高まっています。

 家計節約という意味では、外食企業の飲食券・飲食割引券優待や嗜好(しこう)品、ごちそう感覚の食品などに比べ、よりダイレクトに生活必需品の購入に使える優待券や生活に必要不可欠な日用品そのものが贈呈される方が、物価高対策として効果が高いはず。

 楽天証券の「株主優待検索」で、優待内容の欄の「日用品・電化製品・暮らし」にチェックを入れて検索することで、簡単にお得な日用品系優待株を探し出すことができます。

※楽天証券「株主優待検索」より

 

 いざ検索してみると、9月の全優待株382銘柄中、79銘柄がヒット。
※楽天証券の株主優待検索より。本特集の株価、株数当たりの投資金額、予想配当利回りなどは全て2024年8月5日終値で計算。以下同  

 人気の高い銘柄から、優待のお得度、業績・株価の状況などを加味して有望銘柄をピックアップしました。不安定な相場が続いているため、「安いから買う」ではなく、「ここまで下がったら長期保有前提で買っても下値不安がない」と思える価格帯を見つけて、自分なりに本当に購入して大丈夫かどうか、じっくり吟味してみましょう。

No.1は日用品の高額買い物券が魅力の上新電機(8173)!

 9月の日用品系優待株で高額&大盤振る舞いが一際目立つのが、関西地盤の家電量販店・上新電機(8173)です。

 9月末に単位未満株の1株以上保有で5,000円分の買い物割引券。3月末は100株保有で2,200円分。100株・投資金額約25万8,800円で年間合計7,200円分が贈呈されます。

 買い物割引券は1枚が200円券になっており、2,000円以上の買い物で2,000円ごとに1枚利用可能。割引券を全て使い果たすには、最低でも7万2,000円以上の買い物が必要なため、使い切るのが難しい面もあります。

 ただ、上新電機は近畿が地盤ですが、関東、北陸、東海圏などにも店舗があります。

 店舗がなくても、買い物券は同社の通販サイト「Joshin web」でも利用可能。飲料やお米・缶詰などの食品、洗剤・ソープ類などの日用品や医薬品もWeb経由で購入できるので、日々の生活費削減に大助かりです。

 家電量販店系優待株ではヤマダホールディングス(9831)も人気です。同社の優待は100株・投資金額約4万2,060円で9月末に1,000円分、3月末に500円分、年間1,500円分の買い物割引券です。

 同社は携帯電話や白物家電の販売好調に加え、日用品も含めた品ぞろえ充実の通販サイトが大きな成長源になっており、今期2025年3月期も増収に加え、10円増配の1株当たり100円の株主配当が支払われる予定です。

 増配もあって今期の予想配当利回りは3.86%と非常に高配当。また配当性向を従来の30%以上から40%以上を目安にする新方針も打ち出しており、高配当な割安株としても魅力大です。

 2024年7月23日には年初来高値2,786円をつけた後、8月上旬の株価急落にツレ安した株価は2,500~2,600円台で推移しています。いまだ業績に対して株価が割安感があるため、株価の回復にも期待が持てるかもしれません。


 

2.マツキヨココカラ&カンパニー(3088)

 日用品系9月優待株で二番目に魅力的といえるのは、都市型のドラッグストアを全国に展開するマツキヨココカラ&カンパニー(3088)

 9月・3月末に100株保有で、同社の「マツモトキヨシ」「ココカラファイン」の店舗で200ポイントごとに200円分として使えるマツキヨココカラポイントが2,000ポイント贈呈されます。

 ポイントは500ポイント以上であれば、さまざまな日用品などの賞品や提携ポイントとの交換も可能です。

 生活必需品、化粧品、薬品、飲料などを購入できるドラッグストアはいまや生活に欠かせないインフラ。週に何度も同社の店舗で買い物をする人も多いはずです。そういった人にとって年間4,000円分の優待ポイントは非常に使い勝手がいいといえるでしょう。

 同社はいまだ新店舗の増加が続き、前期の2024年3月期に続いて今期2025年3月期も過去最高の売上高や利益の更新が予想されています。

 都市型店舗が多いため、インバウンド消費による化粧品・医薬品の販売増加などで今後も高成長に期待が持てそうです。また、経営統合の効果で利益率の改善・向上も見込めそうです。

 株価は2023年8月につけた上場来高値3,193.6円から調整期間に入り、8月上旬の全体相場の暴落後は2,200~2,300円前後で推移しています。今期の予想配当利回りは1.84%です。


 

3.東急(9005)

 多くの鉄道会社の優待では、無料の電車・バス全線切符が贈呈されるほか、系列スーパーの買い物割引券など多種多彩な優待割引券が追加されることも多く、生活費削減に役立ちます。

 9月優待株では東武鉄道(9001)小田急電鉄(9007)京王電鉄(9008)近鉄グループホールディングス(9041)名古屋鉄道(9048)など、多くの鉄道会社が無料乗車券優待を実施しています。

 中でも優待取得に必要な株数が少なく、投資金額も少額な鉄道系優待株として注目なのが東京都南部や神奈川県に路線のある東急(9005)です。

 9月・3月末に100株(投資金額約16万8,850円)保有で、東急線・東急バス片道1乗車に利用できる株主優待乗車証2枚が贈呈されます。

 その他、東急百貨店10%買い物割引券5枚(3,000円以上の買い物で利用可)、東急ストア50円割引券20枚(1,000円以上の買い物につき、1,000円ごとに1枚利用可)など、傘下の百貨店、スーパー、ホテルなどの優待券もたくさん贈られます。

 同社はインバウンド需要に沸くホテルや百貨店が堅調で、今期2025年3月期も前期に続き増配予想で予想配当利回りは1.30%。株価も長期的に見ると比較的堅調に推移しています。

 優待で贈呈される無料の乗車券は、できれば運賃の高い長距離移動の際に使いたいもの。

 その意味では、近鉄グループHDも魅力的です。

 9月・3月末に100株(投資金額約32万4,400円)保有で、大阪難波から近鉄名古屋まで長距離利用も可能な沿線招待乗車券4枚が贈呈されます。

 自分が日頃よく利用する鉄道沿線は愛着も強いはず。

 鉄道株の中には小田急電鉄、京王電鉄、東武鉄道のように業績が回復基調にもかかわらず、ここ数年、株価が大きく下落している優待株も多くなっています。住めば都で長期保有するつもりなら、割安で仕込むことも可能そうです。


 

4.ノジマ(7419)

 第4位は、神奈川県が地盤で東京など首都圏にも多数の店舗がある家電量販店のノジマ(7419)

 同じ家電量販店ビックカメラ(3048)傘下の2月・8月優待株コジマ(7513)とは別の企業です。

 ノジマの優待の魅力は1位の上新電機同様、投資金額に対して贈呈される買い物割引券が高額な点。

 9月・3月末に100株(投資金額約15万7,000円)保有で、購入代金の最大10%が割引(最大1,000円まで)になる優待割引券5枚がもらえます。年間の最大還元相当額は1万円分になるため、大型家電購入の際などには非常に助かります。

 その他、来店すると500ポイント(500円分の買い物に利用可能)がもらえる来店ポイント券2枚も贈呈されます。

 同社は2023年にドコモショップ運営首位の携帯販売3位コネクシオを買収したことで、前期2024年3月期に過去最高の売上高を達成。毎年、増配を続けるなど株主還元にも積極的で、今期2025年3月期の予想配当利回りは2.29%に達しています。

 株価は2024年1月に上場来の最高値1,935円をつけたあと調整中ですが、長期的に見ると上昇トレンドが続いています。


 

5.トリドールHD(3397)

 日用品ではなく外食代節約に役立つ優待になりますが、高額の優待食事券が贈呈されて食費節約に役立つのが、うどんの「丸亀製麺」を展開するトリドールホールディングス(3397)です。

 9月・3月末に100株(投資金額約36万2,900円)保有で3,000円分の食事券がチャージされた株主優待カードが贈呈されます。年間で6,000円分と食べごたえのある点が魅力です。

 投資金額が高額になりますが、200株(約72万5,800円)を1年以上継続保有すると、9月・3月末に4,000円分の通常優待の他、追加で3,000円分がチャージされるので、年間で実に1万4,000円分の優待食事券が贈呈されます。

 優待券は、「丸亀製麺」の他、子会社のラーメン店「ラー麺 ずんどう屋」などでも利用できます。

 同社は海外やラーメン店など他業種への進出加速で、今期2025年3月期も過去最高の売上高を更新予想です。成長拡大が続いているため、株価も長期的に見れば右肩上がりで上昇し続けています。

 9月優待株の中ではお得度や使いやすさの面で屈指の外食系優待といえるでしょう。