フェイスブックやインスタグラムなどのSNS(交流サイト)上で著名人になりすましてお金をだまし取るSNS型投資詐欺の被害が拡大しています。

 詐欺に遭わないためにどうしたらいいのか、具体的な手口などについて、カリスマ個人投資家のテスタさん、経済アナリストの森永康平さん、金融ジャーナリストの田代昌之さん(司会)による鼎談(ていだん)を7月5日に行いました。鼎談の動画版も近く公開する予定です。

投資詐欺が急増、被害の半数がSNSに不慣れな50、60代

左から田代昌之さん、テスタさん、森永康平さん

田代 SNS型投資詐欺の被害が急増しています。警察庁の資料では2024年1~5月の認知件数は3,049件で前年同期の約6.3倍、被害額は430.2億円で約8.8倍に上っています。4月にピークを迎えて5月はやや減少しています。SNS型投資詐欺の実態が認識され出したことが減少の一つの要因と思われます。

2024年1~5月、被害者の性別と年齢層(警察庁資料より抜粋)

 総数3,049人の内訳は男性と女性ほぼ同じぐらいで、ほとんどは個人の方です。年齢層はSNS を使った投資詐欺なので、20~30代の若い方の印象があったのですが、50代と60代の方が半分以上を占め、この世代が多いのが特徴です。

 学校で金融教育が始まって教育を受けた20代の方がようやく出てきたぐらいだと思いますから、ほとんどが金融教育を受けていない方々です。例えば、50、60代の会社員の方は退職が近づき、老後を真面目に考え出した矢先、こういった被害に遭われている印象があります。テスタさん、この内容を見ていかがですか?

テスタ 10、20代はSNSをずっと使ってきた世代ですが、50、60代はSNS初心者ということもあります。株を始めたら、SNSでの情報収集がしやすいので使い始めた人もたくさんいると思います。若い人は、自分は詐欺に引っかからないから大丈夫ではなくて、両親や祖父母に普段から大丈夫か声をかけることが大事ですね。

森永 20、30代は投資をするといってもお金をそんなに持っていないし、投資ができる余力を考えると40代以降がターゲットでしょうね。僕になりすました広告で詐欺被害に遭った方はフェイスブックから誘導されるケースが非常に多い。フェイスブックは、若い人はあまり利用していませんが、中高年は頻繁に投稿している印象があります。

なりすましの偽アカウントが次々出てくる

テスタ 僕もこの1年でありとあらゆるSNSでなりすまし広告の被害を受けました。僕の名前や写真でアカウントを作られたり、広告を勝手に出されたり、僕が関与も関知も一切していないところで無限と言っていいほど偽物が出てきました。通報してくれる方がいて偽アカウントが1個なくなっても、次の日には新しく偽アカウントが10個出てくる状態です。

 新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)で投資初心者がこの世界にどっと入ってきたこともあるでしょうし、お金が集まるところで詐欺は発生します。SNSの使い方は教科書で教えてくれないので、自分でちゃんと勉強していくしかないですね。

森永 月次の認知件数の推移はまさに自分の体感に近いです。昨夏ぐらいから僕のところに問い合わせがぽつぽつと来て、今年に入って加速しました。昨夏は2週間に1件程度でしたが、今年1、 2月は毎日4、5件来ました。

「このLINEやフェイスブックのアカウントは本物ですか」「お金を振り込んで返ってこないけどどうなっているんですか」といった内容です。テスタさんや実業家の前澤友作さん、堀江貴文さんが被害の実情を発信するようになって、ようやく最近は減った実感があります。

 SNSのダイレクトメッセージや会社宛てのメールで問い合わせが来て、被害に遭ってほしくないから、なるべく全部返すようにしています。大きな負担です。僕が詐欺をしたと最初からけんか腰の方もいる。「僕じゃないですよ」と言っても冷静に受け止めてくれない。殺害予告もきます。

 SNSで僕にだまされたと書き込みをする人もいて、勝手に顔写真を使われただけではなく、営業妨害や名誉毀損の被害も受けています。

テスタ 僕も全く同じ状況です。見る人が見ればうそっぽい広告だと分かるのですが、テスタはあやしい商売をしている人だと思われて、イメージが悪くなる被害が出ています。本当に迷惑でしかないので、勝手に広告を出してほしくないですね。