為替DI:5月のドル円、個人投資家の予想は?

楽天証券FXディーリング部 荒地 潤

 楽天DIとは、ドル円、ユーロ円、豪ドル円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスのときは「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示します。

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 DIは「強さ」ではなく、「多さ」を測ります。DIは、円安や円高の「強さ」がどの程度なのかを示しているわけではありませんが、個人投資家の相場観が正確に反映されていると考えるならば、DIの「多さ」は同時に「強さ」を示すことになります。

「5月のドル円は、円安、円高のどちらへ動くと予想しますか?」

 楽天証券がドル円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家の79%が「円安/ドル高」に動くと予想していることが分かりました。円安見通しは前月の68%からさらに増加しました。

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成
※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

 円安見通しから円高見通しを引いたDIは+58になりました。前月は+36でした。DIの+は4カ月連続となりました。

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

高インフレ時代、少子化時代こそ在宅勤務

 世界の主要経済圏では、所得から消費者物価上昇率を差し引いた「実質所得」がマイナスになっています。給料以上に物価が上昇しているからです。実質所得の落ち込みぶりは激しく、不況時にしかみられないような水準まで落ち込んでいます。

 厚生労働省発表の2月の毎月勤労統計調査によると、実質賃金は前年同月比マイナス1.8%でした。実質賃金のマイナスは23カ月連続で、リーマン・ショックによる景気低迷期と並び過去最長となりました。名目賃金が下がったのが要因で、物価上昇に賃金の伸びが追いつかない状態が続いています。

 物価上昇の大きな理由とされているのは、エネルギー価格の上昇です。それに34年ぶりの円安が追い打ちをかけています。政府は、2022年1月に始めた燃油価格抑制策を5月以降も継続することを決めましたが、補助金の予算総額は6兆円を超え、財政負担は重くなっています。

 しかし油田を持っていない日銀が、ガソリンの「供給を増やす」ことはできません。円安も止まりません。必定、エネルギーの「需要を減らす」ことがインフレを抑制する唯一の選択肢となります。

 例えば自家用車の運転の自粛を求め公共交通機関の利用を促進させる、あるいは節電や工場の休業を要請するなどです。しかし、実質所得がすでに不況レベルにあるときに、需要を減らしすぎるのは危険な賭けです。

 エネルギー節約という意味では、WFH(在宅勤務)も効果があります。一般的な会社のオフィスの使用時間は、平均すると1日約5時間ですが、照明や冷暖房はそれよりもはるかに長時間使用されています。週末で無人のフロアにこうこうと明かりがついている会社を見かけたことはないでしょうか。

 エネルギーの無駄遣いを止めて従業員が週に3日自宅で仕事をすることで、1日数十万バレルもの石油を節約できるのです。毎年夏になると、日本政府は家庭のエアコン設定を28度に上げて節電対策しろと言いますが、その前に、全日出社の企業を指導するべきでしょう。

 在宅勤務は、通勤時間を業務のために使うことができて効率的です。それだけではなく、子育て中の女性にとっては、通勤時間や通勤距離を気にすることなく、自分のスキルに見合った仕事を探すことが可能になります。長期的に見れば、少子化対策として児童手当や給付金よりもはるかに効果的です。

 これからの時代、仕事上特段の必要がないのに全日出社を強制する会社は、アンチエコで少子化問題無視というレッテルが貼られることでしょう。

ユーロ円

 楽天証券がユーロ円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家の72%が「円安/ユーロ高」に動くと予想していることが分かりました。円安見通しは前月の64%から増えました。

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成
※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

 円安見通しから円高見通しを引いたDIは、+44になりました。円安/ユーロ高見通しは、前月の+28から大幅に増加しました。

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

豪ドル円

 楽天証券が豪ドル円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家の73%が「円安/豪ドル高」に動くと予想していることが分かりました。円安見通しは前月の62%から増えました。

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成
※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

 円安見通しから円高見通しを引いたDIは、+46になりました。円安/豪ドル高見通しは、前月の+24から大幅に増加しました。

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今回は、毎月実施している質問「今後投資してみたい金融商品」で「金やプラチナ地金(じがね)」を選択した人の割合に注目します。各質問の選択肢は、ページ下部の表の通り、13個です(複数選択可)。

図:「金やプラチナ地金」を選択した人の割合の推移

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 2024年4月の調査で、「金やプラチナ地金」を選択した人の割合は21.41%でした。上図の通り、2009年11月に次ぐ、14年5カ月ぶりの高水準です。

 2009年11月は、前年(2008年)に発生したリーマン・ショックをきっかけに始まった世界的な景気低迷が続いていました。景気を回復させる策として主要国の中央銀行が一斉に金融緩和を行い、この金融緩和によって主要国の通貨の価値が希薄化する懸念が生じ、主要国の通貨と異なり信用の裏付けが必要ない金(ゴールド)の価値が高まる観測が生じました。

 こうした中、金(ゴールド)相場は1トロイオンス当たり900ドル台から1,000ドル台へと水準を切り上げ、「1,000ドル超え」や「1,000ドル定着」を演じた金(ゴールド)相場に投資家の皆さまの注目が集まりました。

 14年5カ月ぶりの高水準となった足元にも、主要中央銀行の金融政策が関わっていると考えられます。足元、米国の中央銀行にあたるFRBが、年内にも緩和的な政策の一つである金利引き下げを実施する可能性が浮上しています。米国の雇用情勢がやや弱くなっていることを受けて、現在の高金利状態を是正する思惑が強まっているためです。

 中央銀行の動向のほか、イスラエルとハマスの戦闘やウクライナとロシアの戦争をきっかけに強まっている「有事ムード」が資金の逃避先需要を大きくしていることもまた、金(ゴールド)に注目が集まる要因になっていると考えられます。

 今後、FRBの利下げのタイミングが予想よりも早まったり、有事ムードが一層強まったりした場合、「金やプラチナ」を選択する人の割合が上昇する可能性があります。引き続き主要中央銀行の動向、そして各種有事の動向に、注目していきたいと思います。

表:今後、投資してみたい金融商品 2024年4月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

表:今後、投資してみたい国(地域) 2024年4月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成