今日の為替ウォーキング

今日の一言

「怯えたお金」とは、トレードでつかうべきではない金である

Heart of the Moment

 今週金曜日は米国の雇用統計の発表がある。

 雇用統計は、金融引き締めを行うFRBと密接な関係がある。

 特に今回は12月FOMC直前ということもあってマーケットの注目度は高い。

 ところで、パウエルFRB議長は雇用を増やしたいのか、それとも減らしたいのだろうか?
株式市場は、なぜ雇用市場が弱くなってほしいと思っているのか。

 雇用統計は、インフレの問題と複雑に絡み合って、これまでように「強い雇用統計は、良いことだ」という単純な公式に当てはまらなくなっている。

 世界の中央銀行にとって、高インフレ率が最大の問題だ。中央銀行はインフレ率を引き下げるために何をしているのか。インフレ率の抑制には賃金コストを引き下げる政策が適切だと、FRB(米連邦準備制度理事会)やECB(欧州中央銀行)は考える。しかし、実質所得(名目所得を物価の変動を考慮して調整された所得)が著しくマイナスになっている状況では、このような政策は理解を得られない。

 そのため、需要を抑制することによって、企業の価格決定力と利益率を弱めることを中央銀行は考える。中央銀行は、原油価格や食料品価格の上昇を直接コントロールすることはできない。日銀は油田を持っていないし、日銀職員が小麦の栽培をしているわけでもない。中央銀行にできることは、需要を後退させることだけだ。

 一方、日銀は、日本のインフレ率を下げるのではなく、さらに高くしたいと考えている。インフレ率を安定的に上昇させるためには、賃金上昇が不可欠だが、日本の実質所得は他国以上にマイナスが続いている。給料が上がらない、上がっても物価上昇に全く追いついていないのが現実だ。この状況が近い将来改善される見込みは全くない。

 日本の家庭が、生活防衛として無駄な出費を抑え、質素な生活を心がけるなかで、企業の価格決定権は弱いままで、いつまでたっても値上げできなかった。

 そこで日銀は、大量緩和政策で円安を持続させることで物価高をつくり、国民の意識にインフレ期待を形成してやろうと考えた。物価上昇が続くことが当たり前だという考え(期待)を消費者のマインドに浸透させることで、企業に値上げをしやすくさせるのだ。

 日銀は需要インフレを起こすことができなかったが、円安を利用して輸入インフレを発生させることに成功した。日銀が目的を達成するためには「サステナブルな円安」がどうしても必要なのである。海外の中央銀行はインフレ期待を繋ぎ止めて物価上昇に歯止めをかけようとしている。日銀はその逆で、日本人のインフレ期待を解き放ち物価を上昇させようとしている。

今週の 注目経済指標

出所:楽天証券作成