日本郵船(9101・東証1部)

▼どんな銘柄?

 海運業界で国内トップとなっています。コンテナ船などの定期船、航空運送、物流といった一般貨物輸送事業、自動車やエネルギー輸送などの不定期専用船事業を手掛けています。

 ターミナル拠点は世界で19港、物流事業拠点は世界47カ国、保有船舶は818隻(2021年9月末)で展開しています。

 日本貨物航空、郵船ロジスティクス、共栄タンカーなどを傘下に持ちます。2017年7月に、商船三井、川崎汽船と定期コンテナ船事業を統合しています。

▼業績見通し

 2022年3月期上半期経常利益は3,972億円で前年同期比8.4倍と急拡大しています。また、通期予想は従来の5,000億円から7,100億円、前期比3.3倍に増額、今期3度目の上方修正となる形です。

 上半期経常利益は前年同期比で3,498億円の増益ですが、うち3,026億円は持分法適用会社ONE社を含んだ海運市況の変動要因となっています。年間配当金計画も従来の700円から800円に、再度の引き上げを発表しています。

▼ここがポイント

 会社側では自己株取得も含めた還元性向25%、またはそれを超過することを予定としています。現在の配当計画では配当性向は19%程度なので、自社株買いを実施しない場合、1,050円程度までの増配が今後想定されます。

 ただ、来年度は価格急騰の反動による業績悪化で減配の可能性が高く、結果的に減配幅が小さくなる自社株買いの実施規模が大きくなるほうがポジティブといえます。決算末にかけては自社株買い期待の高まりが株価材料とされる可能性があるでしょう。

HUグループHD(4544・東証1部)

▼どんな銘柄?

 臨床検査薬大手の富士レビオと受託臨床検査大手のSRLが統合して2005年に設立、2020年7月にみらかホールディングスから現社名に変更しています。

 受託臨床検査、臨床検査薬、減菌関連、日本食品エコロジー研究所やセルフメディケーション・健保事業など新規分野の4つの事業セグメントとなっています。新型コロナウイルスに関して、約2.5万件/日以上の検査受託キャパシティを整備しています。

▼業績見通し

 2022年3月期上半期営業利益は270億円で前年同期比3.3倍となり、従来予想の215億円を上振れる着地になりました。つれて、通期予想は従来の300億円から355億円、前期比39.8%増に上方修正しています。

 7-9月期における感染者数の急増に伴い、新型コロナウイルスPCR検査の受託数および検査試薬・キットの需要が想定を上回って推移したもようです。なお、下半期は新セントラルラボ稼働によるコスト増が見込まれています。

▼ここがポイント

 コロナ禍一巡後の業績鈍化懸念が強い状況ですが、海外からの日本入国者数増加に伴う空港での検査需要拡大、無症状者への公費負担によるPCR検査実施の広がりなどは期待され、過度な反動減には至らない可能性があります。

 また、2021年度からの配当政策として連結自己資本配当率を6%とすると掲げています。従来の配当性向50%としていた状況から比べて、2023年3月期の減配懸念は後退している状況です。

コスモエネルギーHD(5021・東証1部)

▼どんな銘柄?

 コスモ石油からの株式移転により、2015年10月に発足した持株会社です。燃料油の国内販売シェアは12%程度と推定されます。現有処理能力は1日当たり40万バレル程度で、千葉、堺、四日市の3製油所で展開しています。

 石油精製・販売のほかに、石油化学、アブダビ首長国での石油開発事業などを行っています。また、再生エネルギー事業なども手掛け、陸上風力発電の国内シェアは第3位です。アブダビ政府系会社が筆頭株主になっています。

▼業績見通し

 2022年3月期上半期経常損益は950億円で、前年同期比14.5倍の水準となっています。原油価格の上昇、石油製品の販売数量増などが大幅増益の背景です。実力値となる在庫影響を除く経常利益も611億円で同3.2倍に拡大しています。

 在庫影響を除く通期の経常利益計画は従来の800億円から1,130億円、前期比5割近い増益に上方修正しています。年間配当金計画も従来計画比20円増配の100円に引き上げています。

▼ここがポイント

 財務体質の改善が進んでいることが評価されます。2021年度末には自己資本、ネットD/Eレシオ(※)ともに、過去最高を記録した2007年度の水準に近づく見通しとなっています。

 また、目先の注目材料は由利本荘市沖プロジェクトの落札となります。落札の有力企業体と捉えられており、落札後は風力発電事業の拡大に拍車が掛かってくるものとみられます。

※ネットD/Eレシオ……有利子負債から現金同等物を差し引いた純有利子負債を、自己資本で割った値。企業財務の健全性(安全性)を見る指標の1つ。