今日の為替トレッキング

今日の一言

中国の成長と繁栄は他国の経済と雇用の犠牲の上に成り立つ「ゼロサム・ダイナミクス」米政府が批判  

Owner of a Lonely Heart

 デッド・キャット・バウンス(Dead Cat Bounce)とは、マーケットが大きく下げた後、一時的に小反発すること。「死んだ猫でも、高いところから落とせば弾む」という意味で、ウォール街の格言の一つです。

 今週25日(月曜)に11.47円まで急落して過去最安を更新したトルコリラ/円は、26日に12.06円まで急反発しました。

 長期下落トレンドが続くトルコリラは、今月20日にトルコ中銀が政策金利を18.00%から16.00%まで一気に引き下げたことで下落に拍車がかかり、トルコリラ/円は12円を割りました。

 欧米との外交関係の悪化もトルコリラの懸念材料となりました。エルドアン大統領は23日(土曜)、同国で拘束が続く実業家の釈放を求めた米独仏など10カ国の駐トルコ大使を「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」と呼び、追放を警告。このことがトルコリラの下落を加速させたのですが、西側各国がトルコの内政に干渉しない姿勢を示したため事態は沈静化、トルコリラも12円台に戻したのです。

 トルコの政策金利はすでに国内インフレ率より低い、実質マイナス金利の状態。トルコ中銀は、インフレは「一過性」だとして利下げを正当化していますが、背後に政治圧力があることは明らか。

 エルドアン大統領は、支持率が過去最低まで下がっていることに焦りと苛立ちを感じていて、国民に不人気な高金利政策をやめたい。ファンダメンタルズを無視してでも、人気回復のために今後も利下げを続ける可能性があります。

 トルコ中銀の独立性は、脅かされているというより、すでにないといっていいでしょう。利下げに反対するトルコ中銀のメンバーはすべて大統領が更迭しました。格付け会社フィッチ・レーティングスは、「トルコ中銀が必要に応じてリラを防衛する余地はほとんどない」とさじを投げています。

 トルコは別の大きな問題も抱えています。トルコ国営銀行ハルクバンクが対イランの制裁回避を手助けしたとして米国がトルコを起訴する可能性があることです。そうなった場合にはトルコの経済が大きなダメージを受けるだけではなく、中東の地政学リスクが高まる。トルコリラの反発があったとしても、現在の状況では「デッド・キャット・バウンス」に過ぎないということです。

今週の注目指標 

出所:楽天証券作成