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不安材料が重なり日経平均は一時大きく調整の場面

 直近1カ月(9月10日~10月15日)の日経平均株価は4.3%の下落となりました。9月14日には一時3万795円まで上昇し、2月につけた年初来高値を更新しました。

 ただ、その後は10月初旬にかけて急落、10月6日には2万7,293円まで下落し、高値からは11.4%の調整となりました。調整一巡後は10月中旬にかけてリバウンドし、下げ幅のほぼ半値戻しとなっています。

 株価が大きく調整した要因は、日経平均高値更新による達成感、中国不動産大手の恒大集団の債務問題への懸念、米連邦政府の債務上限問題に対する警戒感、原油価格上昇などに伴うインフレ懸念の高まり、岸田新内閣の政策が株式市場には逆風になるとの見方などが重なったことです。

 ただ、その後は、中国不動産大手の債務問題が金融市場に与える影響は限定的との見方が広がったほか、米債務上限問題の先送りや米長期金利の低下などで、売り方の買い戻しの動きが優勢となってきています。

 岸田総理が金融所得課税の見直しを急がない姿勢を示したことなども安心感につながったようです。なお、9月末配当権利落ちの再投資による先物買いは、今回は株価の支えにならなかった印象です。

 この期間の個別銘柄の動きとして、下げが目立ったものに商船三井(9104)日本郵船(9101)などの海運株が挙げられます。上半期末配当権利付き最終日を前に、権利落ち後の株価下落を見込んだ売りが優勢となって、権利落ち後も一段と処分売りの動きが優勢な状況です。

 再生エネルギー関連のレノバ(9519)も大きく下げました。再生エネルギー推進派の河野氏が総裁選で敗退したことで、過度な期待感が後退する状況になったようです。

 一方、原油相場の上昇を背景に、INPEX(1605)出光興産(5019)などの石油関連株が上昇しました。ほか、ドル高円安の進行が強まったことで、三菱自動車(7211)SUBARU(7270)など自動車株の堅調な動きも目立ちました。

 期間中には6-8月期の決算発表が本格化しましたが、小売株は高安まちまちの状況となり、注目された安川電機(6506)は実績値のコンセンサス下振れがマイナス視される形になりました。

当面の注目点は、主力企業の7-9月期決算やテーパリング決定後の米株動向

 今後1カ月間の注目イベントは、主要企業の7-9月期決算発表となるでしょう。関心を集めそうなのは自動車関連株になるとみられます。トヨタなどの減産の影響が警戒され、会社計画値や市場予想を下回る決算が多くなる可能性もあります。

 一方、減産がやや長期化する状況にはなっていますが、10-12月期の後半以降は、挽回生産の拡大などもあって、業績も回復に転じてくることが予想されます。決算が嫌気されて下落した局面は、押し目買いの好機になってくる可能性もあるでしょう。

 半導体関連などは引き続き好決算が見込まれますが、出尽くし感の広がりなどは注視したいところです。中国景気の減速の影響などは今後も不透明感が残るため、中国関連銘柄は決算発表前後では手掛けにくくなりそうです。

 米国では11月2~3日にFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催され、ここでテーパリング実施が発表される可能性は高いとみられます。

 すでに、来年央でのテーパリング終了、来年後半からの利上げスタートは織り込まれつつある印象ですが、正式発表を受けて、あらためて長期金利の上昇や株式市場の下落といった流れが強まるのかが焦点になります。

 仮にこうした流れが強まるのであれば、半導体関連など含めたグロース株にとっては、年末にかけてのネガティブ材料と捉えられそうです。

 国内では10月31日が衆院選投開票日になります。選挙通過後は、再度、金融所得課税の行方などに警戒感も強まる見込みです。ただ、自民党の議席数の減少度合いでは、この議論は封印されてくる可能性もあるでしょう。

 金融所得課税はもちろん、岸田政権の「分配」政策アピールは株式市場にとってやや逆風な印象を受けます。総裁選後の海外投資家の売買動向からは、改革期待なども高まっていない状況です。

 今後仮に、政策への評価が高まる方向に変化するとしても、株式市場に波及するには相応の時間が必要となってくるでしょう。

 なかでは、目先の対策としてアフターコロナに向けた需要の喚起策が期待されるものとみられ、アフターコロナ関連株などが引き続き有望であると考えられます。

 また、原油相場や資源価格の上昇基調が続いている中ではインフレ懸念も沈静化しにくく、長期金利の上昇をにらむと、全般的にバリュー株優位の状況が想定されます。グロース株に関しては、好決算発表も材料出尽くしと捉えられるケースも増えると考えます。