グレー明暗のシナリオ分岐

 もっとも、4-6月期に上振れがちだった指標が、7-9月期には前月比・前期比でも、昨2020年急反発を基準とする前年比でも、弱振れて出やすい可能性も指摘されます。デルタ株、中国指標の鈍化などと相まって、景気が強いのか弱いのか、気をもみやすい場面となるでしょう。ここで留意したいのは、景気シナリオの分岐はとかく強いか弱いかの白黒2分法で語られがちですが、現実には、どちらがより白っぽいか黒っぽいかのグレー明暗で捉えるべきケースが普通です。筆者の想定イメージをグレー明暗に分けて整理します。

景気堅調=明るいグレー・シナリオ

 ワクチン接種率が70%まで進捗しても、未接種者は相応におり、新型コロナ感染者数は増減波動を繰り返すでしょう。しかし、3~6カ月もたてば、まずは欧米政府が、重篤者数・死亡者数の減少をチェックしながら、人々の行動規制を緩和・解除する政治判断をし、経済活動の正常化を進めるとみます。米国では9月には、失業給付金の上乗せ分がなくなり、子どもの夏休みが終わることから、求職者が増えて雇用増に弾みがつくでしょう。

 米GDP(国内総生産)は7-9月期の伸びでデフレギャップ(需要不足)をほぼ解消し、10-12月期にはインフレギャップ領域に至る公算です。欧州の経済は時間差で失地回復がじわり進み、さらに遅れて、日本などアジアの回復も2022年にかけて漸進します。欧米の需要回復は足踏みしている中国経済にとっても下支えになると予想します。

景気もたつき=暗いグレー・シナリオ

 米欧日とワクチン接種が進むものの、デルタ株のまん延でロックダウンが各地に広がるケースです。重篤者数、死亡者数はある程度抑えられていても、感染者の絶対数が増えることで、各国で医療ひっ迫が生じることへの対応です。

 とりわけ懸念されるのは中国で、相対的に感染者数が少なくても、コロナ抑制先進国としての威信、自国製ワクチンの信頼維持、北京五輪への対応として、ロックダウンを広範に行う可能性があります。そのことが、世界経済の先行き不安を呼び、株式市場の動揺も招く恐れがあります。

 8月時点の一部指標悪化は、景気回復のデコボコのボコ、あるいは一時的足踏みと判断されるものの、そのまま勢いを回復しない展開です。