摩擦的失業  Start Something

 米国の製造業生産高は好調です。すでにコロナ前の水準を上回っています。もっとも製造業の伸びは米国に限らず世界的な傾向で、日本でも家電の売上や在宅勤務用PCの需要が伸びています。旅行やコンサートに使われなかったお金が、家具やエアコンなどの購入に回ったこともあります。

 その一方で人流抑制によって小売業や外食産業が苦境に陥っています。しかし、それらの業種が消えたわけではない。実店舗からオンラインショッピングへの構造変化など、これまでとは違う商品を違う方法で売っているのです。

 4月の米雇用統計は、NFP(非農業部門雇用者数)が100万人増の期待に反して26.6万人増にとどまりました。雇用が伸びなかった理由のひとつに、需要と供給のミスマッチがいわれています。

 労働移動に伴って発生する一時的、過渡的な失業を「摩擦的失業」とよびます。 摩擦的失業は、各企業の求める労働者の知識・技能と個々の労働者のもつ知識・技能とのミスマッチなどに起因します。米国の雇用市場に「摩擦的失業」が発生していると考えられます。

 コロナ禍のなかで「働き方の構造変化」が加速すると同時に摩擦的失業が増加。「働き方の構造変化」の代表が、いわゆるDX(デジタルトランスフォーメーション)です。DXは「企業がデータやデジタル技術を活用し、ビジネスモデルを変革し、価値提供の方法を変えること」と定義されています。

 オンラインで販売する技能がない従業員が摩擦的失業者となり、DXについていけない企業が倒産するというのが、今の経済です。