「テーパー・タントラム」がやってくる?

 マーケットでは不思議な動きが起きています。米国の経済データは悪化しているのに、米長期金利は逆に上昇している。1月の米雇用統計は、非農業部門の雇用者数が僅か4.9万人の増加にとどまりました。米国の雇用市場は、コロナショック直後に崩壊ともいえるような縮小を経験しました。その後は驚異的なリカバリを見せたのですが、あえなくペースダウンが始まり、昨年12月の雇用者はついに23万人「減」。1月CPI(消費者物価指数)も予想より低かった。マーケットが期待するインフレの兆しは、少なくとも統計データのどこにも表れていません。

 しかし、米長期金利は、予想より悪い経済データに反応して下落するのではなく、逆に上昇している。この不可解ともいえる現象は、データが悪いほど、バイデン景気刺激策は大きくなる(1.9兆ドルに近づく)という期待のあらわれかもしれません。大型景気刺激策とともに、ワクチン接種率の高まりで移動制限も解除も近く、今年下半期の米経済成長は爆発的な回復が期待できる。そのような予想が増えています。

 すると、あの「テーパー・タントラム」が繰り返されるリスクも高まるといわれています。「テーパー・タントラム(taper tantrum)」とは何かというと、2013年5月にFRBが(米連邦準備制度理事会)異例の緩和縮小(テーパリング)を示唆したことで、国際金融市場に大きな波乱が起きたことです。

 緩和縮小についてパウエルFRB議長は、「(FOMCの)議題にさえ上っていない」ときっぱりと否定。ですが、それを心から信じている投資家はあまりいないでしょう。今年の夏以降は緩和縮小という爆竹に注意です。