NTTの株価は「買収される側は買い、買収する側は売り」のセオリー通りに

 反対に、今度はTOBを仕掛ける側のNTTの株価の動きについても見ていきます。

(図2)NTT(東1:9432)の日足チャート

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 TOBの観測報道が出たのが9月28日の夜だったので、株式市場が反応したのは翌29日からです。株価の反応は、一段安となった後にTOB発表前の株価を超える反発を見せ、再び低迷しているという値動きです。

 NTTが今回のTOBを行うのに、4兆円以上という巨額の資金が必要になると言われています。過去の事例を見ても、最大のTOB案件であるだけに、財務や業績に対する負担と影響が重くなるのではという懸念があるというのが株安の背景です。一般的なM&A(買収や合併)のセオリーとして、「買収される側は買い、買収する側は売り」というのがありますが、TOBもM&Aの手段のひとつですので、セオリー通りの反応と言えます。

 ただし、ローソク足の形を見ると、安値圏ではいわゆる「ヒゲ」の長いものが目立っています。ヒゲの長さは投資家の揺らいだ気持ちを表すとされていますが、確かに財務負担が懸念されるものの、ドコモを完全子会社化することによるメリットも期待できるという見方も根強いと見ることができるわけです。今後のNTTの中長期の方向性は、TOBにかかったコストに見合う成長につなげられるかどうかがカギになります。