ソニー
1.ソニーは、PS5の発売日と価格を発表した
2020年9月17日、ソニーは「プレイステーション5」の発売日と希望小売価格を発表しました。
発売日は、日本、米国、カナダ、メキシコ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国は、11月12日(木)、その他の国では11月19日(木)です。
希望小売価格は、標準型(BDプレーヤー内蔵)が、北米499.99ドル、EU499.99ユーロ、イギリス449.99ポンド、日本49,980円、デジタルエディション(ダウンロード専用機)が、北米399.99ドル、EU399.99ユーロ、イギリス359.99ポンド、日本39,980円です(北米と日本は税抜き価格、欧州は税込み価格)。
性能を見ると、CPUは「x86-64-AMD Ryzen“Zen 2”」(AMDの⾼速CPU「Ryzen」のカスタマイズ)、GPUは「AMD Radeon RDNA 2-based graphics engine」(AMDの⾼性能GPUのカスタマイズ)で、いずれもTSMCの7ナノラインで⽣産されます。CPUの性能の⾼さと並んでGPUの性能の⾼さが特徴で、⾼精細動画の⾮常に滑らかな⾼速処理が出来ます(「レイトレーシング」)。また、825GBの⾼速SSDを搭載します。
9月17日にはPS5用ゲームも発表されました。「ファイナルファンタジーⅩⅥ」(PS5専用、発売日未定、スクウェア・エニックス・ホールディングス)など5作が新たに発表されました。
11月12日のPS5発売時には、「Marvel's Spider-Man: Miles Morales」(パッケージ版は5,900円、7,900円)、「Demon’s Souls」(7,900円)、「Destruction AllStars」(7,900円)、「リビッツ!ビッグ・アドベンチャー」(6,900円)の4作が発売されます(いずれもソニー製[ソニーのファーストパーティ製])。特に、「Marvel's Spider-Man: Miles Morales」はPS5市場の立ち上げ役となることが期待される作品です。なお、「Marvel's Spider-Man: Miles Morales」、「リビッツ!ビッグ・アドベンチャー」については、PS4版も発売されます。
2.これだけの高性能機でありながら、この価格の安さはサプライズ
9月9~10日に競合するマイクロソフトの新型Xbox「Xbox series X」の希望小売価格が、北米499ドル、日本4万9,980円、廉価版の「Xbox series S」が各々299ドル、3万2,980円(いずれも11月10日発売)と発表されたことから、PS5もそれに近い価格になることは予想されていました。しかし、率直に言って私は同じ価格になるとは思っていませんでした。PS5とPS4の間で下位互換性を付けること(PS4⽤ソフトがPS5でもプレイできる)、PS4⽤ソフトが豊富にあること、PS5専⽤の⼤型ソフトが揃いつつあることを考えると、新型Xboxに対してPS5は5,000〜1万円⾼い可能性があると考えていましたが、新型Xboxと同じ価格になるとは率直に⾔って驚きました。
高性能でありながら明らかに安い、コストパフォーマンスの高い価格設定をしていること、「Marvel's Spider-Man: Miles Morales」をはじめとする大作ソフトを発売時から揃えていること、巣ごもり特需が続いていることを考えると、PS5に対しては相当大きな需要が予想されます。楽天証券では、今期1200万台、来期2,000万台と予想しますが(前回予想は今期1,000万台、来期2,000万台)、生産能力次第ではこれ以上の可能性も十分あります。
グラフ4 ソニーのゲームサイクル:プレイステーションの販売台数
3.PS5は最も成功するゲーム機になる可能性がある
PS5で想定される需要層は、まず、PS4ユーザーです。PS4の普及台数は今期末までに約1億2,000万台になると思われます。
次は、全世界にいるパソコンゲームユーザーと思われます。特にeSportsの競技人口と視聴者が重要な市場になると思われます。eSportsの競技人口は現在1億人以上、視聴者数が4億人以上と言われています。eSportsで使う機種は、パソコン、スマートフォン、家庭用ゲーム機と様々ですが、大きな大会の場合はパソコンゲームで行うことが多いようです。この競技人口と視聴者で、パソコンゲームを主にプレイしている人たちがPS5のターゲットになると思われます。例えば、PS5がその安さと高性能のゆえにeSportsで使われるようになれば、高性能パソコンで競技してきた人たちもPS5を使う機会が増えると思われます。視聴者もその影響を受けると思われます。
ちなみに、PS5の性能と同等のパソコンは20万円前後になると言われています。PS5のコストパフォーマンスの高さと実価格の安さは強烈と言ってよいものです。
最後に巣ごもり特需の恩恵もある程度受けると思われます。巣ごもり特需にはゲーム初心者が多いと思われますが、この中でしばらくゲームから遠ざかっていた人がPS5発売を機に戻ってくるかもしれません。
PS5はプレイステーション史上だけでなく、家庭用ゲーム機史上最大の普及台数になる可能性があります。これまで、据置型、携帯型を合わせて過去最大の普及台数はPS2の1億6,000万台です。前述したようにPS4ユーザーの多くがPS5を買い、加えてeSportsの競技者と視聴者、しばらくゲームから離れている人たちが合わせて1億台以上買えば、普及台数は2億台を超えます。
一方で、発売価格を安くしたために、ハード1台の採算は赤字と思われます。おそらくPS51台に付き、1万円程度の赤字になっている可能性があります(即ち、今期はハードだけで1,000億円以上の赤字になる可能性があります)。
ただし、ソニーが重視しているのは、ゲームソフト販売、有料追加コンテンツ、アイテム課金、各種サービス料などを含めたハード1台当たりの総合採算です。ソニーは、ハード1台当たりの売上高と利益を大きくすることにPS4時代に成功したため、PS5でも思い切った価格戦略を打ち出したものと思われます。PS5のソフトラインナップが良いため、PS5のハード生産さえ順調に進めば、ハード1台当たりの採算は順次よくなると思われます。
また、来期はハードの量産効果が進むことによってハードの赤字が縮小し、来々期にはハードの黒字もあり得ると思われます。今後の動きを注視したいと思います。
4.楽天証券の業績予想と目標株価は変更しない
楽天証券の業績予想(詳細は、楽天証券投資WEEKLY・2020年8月28日号を参照)は変更しません。当面は、2021年3月期2Q決算を待ちたいと思います。今後6~12カ月間の目標株価も前回の1万2,000円を維持します。引き続き投資妙味を感じます。
表3 ソニーの業績
表4 ソニーのセグメント別営業利益(通期ベース)