買い戻し一巡後は調整場面も想定を

 5月後半にかけての株価一段高は、上昇率が高かった業種をみても、売り方の買い戻しが主導したものと考えられます。ネットの裁定残高が過去最大のマイナス幅になった反動で、目先のさらなる買い戻し余地も残りますが、今後こうした需給要因が一巡した際には、調整場面が訪れる可能性は高いと考えます。

 現在の株価水準は中期的な経済・業績の回復をある程度織り込んだものとなっているため、今後は経済活動再開の動きに対するポジティブな反応は弱くなってくるでしょう。

 4-6月期の業績は、非製造業では観光・運輸、飲食など、製造業では自動車関連を中心に、かなり厳しいものとなるでしょう。業績見通しが厳しめの企業ほど業績予想を開示していないものも多く、これから第1四半期決算の発表に向けては業績リスクが高まる状況となってきそうです。

 アジアや南アメリカなどを中心に、世界的にウイルスの新規感染者数は高止まりしていること、米中摩擦の激化による世界貿易停滞リスクが再燃していることなども株価を抑える要因となりそうです。

 これからは、短期的な業績安心感のある業種などに関心を絞っておく必要がありそうです。情報通信や医薬品、食料品、建設などの他、半導体関連なども足元での新型コロナの影響は限定的だと思われます。

 いち早く景気の回復ペースが強まっている中国関連では、米中摩擦の影響は警戒されますが、インフラ分野、現地でのEC(電子商取引)需要には期待も持てるでしょう。また、コロナの影響によるリストラの動きにおいては、オフィスの縮小に伴う移転需要、退店店舗からの入れ替えに伴う需要増などでメリットを受ける銘柄にも注目です。

 その他、全体相場の一段高要因になり得るのはウイルス開発の進展とみられ、この分野の関連銘柄は今後も人気化しやすいとみられます。

バリュー株物色では配当計画発表済みの高利回り銘柄に注目

 足元では再度バリュー株の相対パフォーマンスが高まりつつあります。ただし、それはあくまでも買い戻しの対象になっている面が強く、買い戻し一巡以降の継続性には疑問も残ります。

 とりわけ、現在は業績予想が多くの企業で非開示のため、今後の業績悪化の表面化に伴うPER(株価収益率)水準の割高感の台頭、減配や無配転落に伴う利回り妙味の消滅といった懸念が残ります。

 配当利回りに注目をする上でも、前期の配当をベースとするのでなく、すでに配当計画を発表した銘柄に注目するべきと考えます。金融株などは、総じて配当計画を公表していますので、当面はバリュー株のなかでも買い安心感が強いといえます。