為替DI:ドル/円は「ロックダウン」状態?

楽天証券FXディーリング部 荒地 潤

 楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示しています。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成 

「6月のドル/円は円安、円高のどちらへ動くと思いますか?」

 5月末に楽天証券が実施した相場アンケートの結果によると、回答頂いた5,054人のうち約33%(1,647人)が、6月のドル/円は「ドル安/円高に動く」と考えていることが分かりました。

 一方「円安に動く」と考える人の割合は最も少ない約25%(1,279人)。最も多かったのは「動かない(分からない)」の約42%(2,128人)でした。

 DI(円安見通しと円高見通しの差)は▲7.28。 3カ月連続のマイナスですが、マイナス幅は先月(▲12.45)より縮小しています。

 FX市場の多くの人々は、ドル/円に対して強いフラストレーションを感じているのではないでしょうか。5月のドル/円のレンジは2.10円でしたが、1日の値幅は平均0.58円しかなく、1日で0.24円しか動かない日もありました。つまり、ドル/円は一瞬大きく動くことがあるのですが、大きな流れに発展することなく、すぐに凪(なぎ)状態に戻ってしまうのです。

 新型コロナの世界的流行が始まった時、セーフヘブン(安全資産)通貨としての役割を果たしていた円が買われ、ドル/円は1万171円まで円高に動きました。しかし、その後ウイルスがピークを迎え、世界経済が再開へ動きだすと株式市場は大幅反発。ドル/円も円安に戻りました。

 ドル/円がいつまでもロックダウン(膠着)状態から抜け出せないのは、投資フローが奇妙なバランス状態にあるせいかもしれません。

 2月、3月のドル/円は、セーフヘブン取引(円買い)が行われ、海外からマネーが流入した。しかし一方で、国内機関投資家や日本の年金は外国債券などへの投資(円売り)をすすめ、記録的なマネー流出を引き起こしました。

 コロナ感染パニックがおさまると、海外投資家はセーフヘブン取引から撤退(円売り)を始めた。国内投資家は、FRB(米連邦準備制度理事会)の量的緩和政策によって利回りの魅力が薄れた外債投資を縮小して国内に資金を還流させる、いわゆるレパトリ(円買い)の動きが強まりました。

 このように、円を介在した流出と流入のフローがタイミングよく均衡していたことで、結果として、ドル/円のロックダウン状態(封鎖)が続いているわけです。

 5月のユーロ/円の終値は119.74円。4月の終値に比べて2.35円のユーロ高/円安でした。

 5月末に楽天証券が投資家を対象に実施した相場アンケート調査によると、回答頂いた5,054人のうち、約35%(1,761人)が、5月のユーロ/円は「ユーロ安/円高に動く」と考えていることが分かりました。

 一方で「ユーロ高/円安に動く」は最も少ない約17%(865人)でした。「動かない(分からない)」は、約48%(2,428人)。

 ユーロ/円のDI(円安見通しから円高見通しを引いたもの)は▲17.73。3カ月連続のマイナスとなりましたが、マイナス幅は先月(▲22.71)に比べ5ポイント少なくなりました。

 5月の豪ドル/円の終値は71.87円。4月の終値に比べて2.13円の豪ドル高/円安でした。

 楽天証券が5月末に投資家を対象に実施した相場アンケート調査によると、回答頂いた5,054人のうち、約30%(1,511人)が、5月の豪ドル/円は「豪ドル安/円高に動く」と考えていることが分かりました。

 一方「豪ドル高/円安に動く」は最も少ない964人(約19%)。「動かない(分からない)」は2,579人(約51%)で半数を超えています。

 豪ドル/円のDI(円安見通しから円高見通しを引いたもの)は▲10.82。3カ月連続のマイナスとなりましたが、マイナス幅は先月(▲13.33)から2.5ポイント少なくなっています。