米FRBが緊急利下げを実施しても米国株は下げ止まらず

 新型コロナウイルス感染拡大による景気不安を受け、3月3日、FRB(米連邦準備制度理事会)は、緊急利下げを実施しました。政策金利であるFF金利の誘導水準を、1.50~1.75%から、1~1.25%へ0.5%引き下げました。ただし、それでも米国株は下げ止まらず、下落が続いています。

 利下げは、通常、株にとって支援材料ですが、今回の利下げは、米景気不安が強まっていることを追認するだけの効果しかありませんでした。利下げしても、米「長短期金利の逆転」が解消しないことから、株式市場に評価される内容とはなりませんでした。

米長期(10年)金利とFF金利、月次推移:2004年1月~2020年3月(6日)

出所:ブルームバーグより楽天証券経済研究所作成

 長短金利逆転(短期金利が長期金利よりも高くなること)は、米国で「景気後退の前触れ」と考えられています。実際、過去、長短金利が逆転した後、米景気は後退に至ることが多かったと言えます。2006~2007年もそうでした。長短金利逆転が続いた後、2008年のリーマン・ショックにつながりました。

 今回、2019年5月、長期金利の低下により、FF金利(短期金利)が長期金利を上回りました。米FRBは利下げを続けましたが、長期金利の低下の方が速く、なかなか長短金利逆転は、解消しませんでした。3月3日に0.5%緊急利下げしても、まだ解消していません。さらなる利下げが必要と、市場では考えられています。