ドル相場次第の新興国相場

 ここまで、ブラジルを例に、新興国のブームと破裂、悪循環、そして立ち直りへの道程を見ました。ただし新興国の場合、自助努力だけでは立ちゆきません。自国経済の健全化に加えて、世界経済の堅調、さらにドル安が必要になります。

 新興国は、歴史的に9~10年のドル安サイクルでブームとなり、6~7年のドル高サイクルで危機に見舞われてきました(図2)。背景として、米国が相対的に金融緩和気味でドルがだぶつくとき、ドルは軟化し、他方で高利回りを求めて新興国に流入しがちです。ドル資金は、新興国経済に活況をもたらした後、やがて米国が金融を引き締めてドル高トレンドに移ると、米国へ還流し始め、新興国を窮地に陥れます。

図2:ドルのサイクルと新興国 

出所:Bloomberg Finance L.P.より田中泰輔リサーチ作成

 2000年代以降の新興国ブームは、ITバブル崩壊、同時多発テロ、リーマン・ショックにさいなまれた米国の超金融緩和の産物といって過言ではありません。そして2011~2012年に米国が景気の自律回復に向かい、ドル高地合いを取り戻すにつれ、加熱した新興国相場が反落したのです。

 足元のドル高トレンドは、トランプ米政権の減税など景気刺激策と、ユーロや中国元(人民元)の下落という敵失によって、名残を残しつつも、おそらく終盤に来ていると判断しています。