ナバロ氏発の景気後退に備えよ

 レポートやラジオで述べてきたように、関税第4弾や中国を為替操作国に指定を決めたのは、トランプ米大統領とピーター・ナバロNTC(米国家通商会議)委員長である。この2人の確信犯の行動は基本的にブレない上に、2人とも反ウォール街である。

 ナバロ氏は米中戦争の裏側でウォール街や富裕層は中国と結託し、ホワイトハウスに攻撃を仕掛けていると不満をあらわにしている。

 ナバロ氏がWSJ(ウォールストリートジャーナル)への寄稿で「景気後退に備えよ」と警告し、トランプ大統領も現在の株価の下落をさほど気にしていないようだ。

 しかし、いまだに市場は、2020年に大統領選挙を控えているトランプ大統領は株が下がるようなことはしないだろう」という思い込み、米中の冷戦は年内に休戦するのではないかといった楽観的な期待が大きい。しかし、9月1日に米国は中国製品への追加関税を発動した。

 トランプ大統領としては、米中通商戦争を激化させることで、パウエルFRBにさらなる「利下げ」というカードを切らせようとしている。トランプ大統領は来年の大統領選を見据えた動きに出ているのである。

 債券王のジェフリー・ガンドラックは8月23日に、「トランプ大統領は危険なゲームをしようとしている。FRBに利下げさせ金融緩和がタイム・ラグの来年夏(8月)あたりに効いてくるように現在は意図的に経済を弱めている。」と語っているが、これは筆者が以前から述べている見方と同じである。選挙は三カ月前の景況感が重要である。トランプ大統領としては、来年の8月以降に株価が上昇軌道を走ればベストだろう。

 ナバロ氏やトランプ大統領は、株価急落の理由をパウエルFRBの愚かな政策のせいだとしており、パウエル氏は利下げをせざるを得ない状況に追い込まれていく。しかし、利下げのノリシロは2%しかなく、FRBが今年後半に追加利下げに動けば、景気後退や金融危機になった時に打つ弾がなくなってしまう。次の景気後退や金融危機にFRBはQE4(量的緩和第4弾)で対処するしかない。

 だから、10年単位でみた株の大きな買い場はQE4である。QE4が実施されるには、金融危機や株の暴落という大義名分が必要である。

 米国の利下げなど、株の買い場でもなんでもない。市場はさらに催促をするだろう。ウォーレン・バフェットが現金を温存し、株を買っていないのはQE4を待っているからであろう。