いま何が起こっているのか

 金融危機後の米国経済は、強力な政策のお陰で、2012年あたりから自律回復し始めました。一方、欧州、新興国、中国の経済と市場の不安が相次ぎ、米国一人勝ち、ドル独歩高の様相が強まりました。日銀の異次元金融緩和も手伝って、ドルは対円でも急騰しました。

 このドル高が、やがて米輸出を鈍らせ、米企業の海外収益を圧迫し、原油価格急落の一因となってシェール関連の国内投資まで落ち込ませました。2016年早々、米景気は自律的に軟化サイクルに入りかかりました。一時125円まで上昇したドル/円はここで100円割れへ、日経平均株価は一時の2万1,000円近くから1万5,000円割れへ急落しました。

 仮に2016年の米国大統領選挙で、民主党候補だったヒラリー・クリントン氏が勝利したら、共和党主導の議会との確執で有効な政策を出せず、米国景気はダレたはずです。

 ところがトランプ共和党政権が誕生し、共和党主導の議会と手を携えて、非現実的と思われた景気刺激策を実現させます。自律的には軟化するはずの米国経済が、政策の力で再浮揚したのです。

 ただし、米国景気は何年もの拡大後で、政策で押し上げても伸び代が限られます。景気「成熟」段階をさらに嵩上げしようという財政政策を受け、FRBは利上げテンポを速めました。

 こうして2018年半ば、長期金利が景気中立とされる3%に絡んだところで、金利敏感な住宅需要が失速し、景気終盤の始まりを示唆。基本モデルどおりに、次は景気先行的な米国株価(特に大型株)の急落、それに伴うドル/円の下方リスク増大を想定しました。そして、秋から2019年明けにかけて、実際に米国株安とドル/円の急落が連続して起こりました。

 ただしその後に、米国景気、株価、ドルは数カ月にわたって持ち直しそうだという想定を加えました。この一連の判断の裏には、米国の景気と市場のサイクルに起こりつつある新たな変化があります。これを次回明らかにしましょう。

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