特徴的なネーミングと、「そこまでするか」というコスト削減

 商品開発メンバーがもうひとつこだわったのがネーミングだった。とくにネット販売の場合、まずは目に止めてもらう必要があるため、インパクトのある名前をつけることが絶対条件だと考えられたからだ。

 こうして生まれたのが「<購入・換金手数料なし>ニッセイ〇〇インデックスファンド」というシリーズ名。上原さんにはこの案が最初、あまりピンとこなかった。あまりに説明的すぎるし、商品名としては長すぎる気がした。だが、何度も眺めているうちに、コレしかないと思うようになったという。

「『ノーロード』とカタカナにしたほうがスマートだったかもしれません。しかし、我々は『手数料なし』という漢字の名前を選んだ。投資経験のない人に『ノーロード』と言っても、なんのことかわからないでしょう? このシリーズは、これから投資を始める人にも着目してほしいという思いで進めていただので、字面や耳障りの良さよりも、分かりやすさを優先したんです」

 商品名で眼を引くことは狙ったものの、それ以外の広告宣伝は一切していないという。

「少しでも信託報酬を低くするには余計な費用をかけられないからです。というより、広告宣伝にかけるお金があるのなら、それはコスト削減という形で受益者に還元すべきだろうというのが、このシリーズの基本的な考え方です。この考え方は徹底しています。なので、目論見書も、ロゴのデザインやイラストなど、お金のかかる装飾は一切排除して、単色印刷でいくことにしました。そしたらとても質素で武骨なものになってしまいましたけど(笑)。さらに、ネットのお客様向けなので、目論見書を冊子に製本してお渡しするのもしないことにして、印刷費をカットしました。今どき、基本、電子交付だけで完結しますから」

日本の個人向け投信で初めて本格的にコストにこだわったインデックスファンドとしてデビュー

 2013年6月──。こうして<購入・換金手数料なし>シリーズは、日本のリテール向けインデックスファンドで初めて本格的にコストコンシャスなファンドとして、デビューを飾る。まずは「Jリート」を先行販売し、半年後、今回、海外債券部門最優秀ファンド賞を受賞した「外国債券」。そして「外国株式」「グローバルリート」。
これらのファンドは当時の破格といえる信託報酬率30bp(0.3%)台で設定された。その後も日本株式モノや新興国モノ、各種バランスファンドなどをラインアップに加え、現在計12本リリースしている。
上原さんは発売当時のことをこう話す。

「いっさい宣伝はしないという方針でしたから多少出足が鈍くてもしかたないと考えていたのですが、予想を上回る売れ行きに驚きました。当時から投信ブロガーの方々が着目してくださって、たくさん記事を書いてくださったんです。その効果が大きかったと思います。」

また、ネーミング効果もあったという。

「ひと目見れば低コストがウリのファンドと想像がつくため、幅広い方々が関心を寄せてくださいました。最近、個人投資家の皆様の間では『なしシリーズ』『なしなしシリーズ』といった呼び方が定着していて、その点でもこの名称にしてよかったと思います」