NISAにお得感を感じるのかは少々疑問

 もしも、120万円で購入した株が運良く上昇して20%の含み益の状態で売却した場合、24万円の利益があがります。本来は20%の税金がかかり4万8千円を税金として納めなくてはいけませんが、NISAの制度を使った口座で取引すれば、この4万8千円分の課税が免除されるというのが一般的に認識されている『NISA』です。

 ……でも、あれほど鳴り物入りで始まってNISA口座を作るのに面倒な手続きが必要なのに、この程度の利益しかないんだ……と思った人もいるんじゃありませんか?

 たしかに、手間暇と利益額のちぐはぐ感は否めません。おまけに運悪く、損が出る場合もあります。投資になじみのない人が、わざわざNISA口座を開いて、お金が増えるか減るかわからないギャンブルをしたのに、得する金額が平均5万円以下というのは、どうにも割りが合わないような気がします。

 

NISA口座の活用者は全人口の4%しかいない

 このように現状のNISAは投資をすることのメリットを感じないと思った人が多いためか、それほど活用されているとは言えない状況です。

 実際、日本人のNISA口座の開設状況は平成28年6月末時点で1030万口座(1人1口座)で、そのうち、実際に活用されている口座は46.5%しかありません。つまり、NISA制度は全人口比で4%(500万口座)ほどしか活用されていないのです。(平成27年12月調査)国民のおよそ半分が利用しているといわれる英国のISAと比べると、甚だ少ない利用状況と言わざるを得ません。

 

投資とは資産を形成するために行うもの

 現状のNISAの問題点は、損益通算できないことや損失繰越をできないなど、様々な点があげられますが、最大のデメリットは時限措置のため5年の非課税期間が終わると、銘柄を一般口座もしくは特定口座に株式は移動させなければいけないことと言われています。(限定的なロールオーバー制度はあり)このとき、最初の購入額ではなく、購入単価がその時の時価に変更になるため、それ以降の株価の上下によっては、損しているのに税金がかかるという状況が生まれることもあります。節税や目先のお得感で宣伝しているのに、現状のNISAは、矛盾した欠陥を抱えています。

 たしかに非課税期間はわずか5年しかなく、株式運用で十分な利益を出すには期間が短すぎるという批判は、投資経験者の多くが同意するのではないでしょうか。(英国ではISAは時限措置は撤廃されて恒久制度化されています)
ちなみに長期投資は、20~30年の長きに渡って投資をすることも珍しくありません。コツコツと経済の成長に投資をして、自分がリタイアするための年金がわりにするというのが米国や英国の主流な投資スタイルです。5年で結果を出すために、わずかな売却益の獲得を目指して銘柄選びをするよりも、投資は資産形成のために行うべきだとはっきり述べたのが、森信親元金融庁長官です。もう一度繰り返しになりますが、個人投資家が投資で成功する秘訣として、

  • ゆっくりとしかし確実にお金を貯める秘訣は再投資(複利)にあると認識すること
  • 市場の値上がり値下がりを気にかけず、一定額をこつこつと投資すること
  • 資産タイプの分散をできるだけ図ること
  • 市場全体に投資するコストの低い「インデックスファンド」を選ぶこと

 この4つの項目を過去の偉大な投資家や資産運用を生業にしているプロフェッショナルは、こぞって挙げています。このため森長官のたっての希望により長期投資の視野にたって日本人の資産形成に寄与するNISA制度を新たに創設することを目標に作られたのが、2018年1月から始まる『つみたてNISA(積立NISA)』なのです。