1:インデックス運用は手数料が安い

 インデックス運用の商品の手数料は、公募の投資信託で通常ノーロード(販売手数料ゼロ)で信託報酬が年率0.5%前後、ETFでは上場株式と同様の売買手数料がかかるものの(ネット証券を利用すると売買代金の0.1%未満になることが多い)信託報酬が年率0.1%程度のものがあり、同じアセットクラス(「国内株式」「外国株式」などの資産種類の分類)のアクティブ運用の商品と比較すると、圧倒的に安い。

 アクティブ運用の商品は、公募の投信では販売手数料が2〜3%で信託報酬が1.5%を超えるものが多く、比較的良心的な価格設定の商品でもノーロードで信託報酬が1%といったものが多い(手数料はいずれも税抜きベース)。

 インデックス運用の商品の手数料が安い理由は、「株価指数と同じ銘柄・ウェイトでポートフォリオを作って運用すればいいので、アナリストによる投資銘柄の調査やファンドマネジャーによる銘柄選択、ポートフォリオ構築などの手間が不要なので、安価に運用できる」というのが、運用会社の建前上の言い分だ。

 しかし、アクティブ運用の商品にあって、リサーチが本当に利用されていてコストがかかっているかは個別に差はあるが大いに怪しく、それが役に立っているかとなるとさらに怪しい。また、システムや事務的なコストは銘柄数の多いインデックス運用の方がかかっているのではないかと思われるケースもある。

 アクティブ運用の商品に対する手数料の高い値付けは、自社に運用能力があることにしてこれを高く売りたいと考える運用会社側のビジネス的思惑を強く反映したものだといえるだろう。

 また、アクティブ運用とインデックス運用では、前者の方がファンド内での銘柄の入れ替えに伴う売買コストが大きい場合が多く、この点でもインデックス運用の方が「余計な手数料がかかっていない」と言える。

 運用商品における手数料の差をどう評価するかだが、第1に手数料は「リスク・ゼロで発生するマイナスのリターン」であり、確実に運用パフォーマンスを悪化させる原因だ。

 また、事後的にはアクティブ運用が手数料差の分だけインデックス運用を上回っていればいいのだが、事前の期待値ベースでは(すなわち投資する商品を選択する段階では)、細かな計算を省略するが、アクティブ運用に伴うリスク(「アクティブ・リスク」と呼ぶ)の増加を相殺する追加リターンの必要性を考慮すると、運用そのものにおいて、アクティブ運用はインデックス運用に対して、手数料差の2倍以上期待リターンでプラスの差を持たなければならない。

 ところが、現実には、アクティブ運用商品の平均的な運用パフォーマンスは、インデックス運用商品のパフォーマンスを下回ることが多い。

 運用会社や販売会社は強調しないが、運用商品の選択にあって、手数料の差は圧倒的に重要な要素だ。同じアセットクラスの商品を比べる場合、「[1]アセットクラスのリターン + [2]運用の巧拙によるリターン − [3]手数料」がトータルのリターンになる訳だが、[1]は共通であり、[2]を第三者が正しく評価することが難しいとするなら、[3]の差を見て、手数料のより安い商品を選択することが「投資家が自分でできる運用の改善」として、ほぼ唯一の重要ポイントなのだ。

 運用商品の選択・評価にあっては「市場の予測」と「器としての商品の評価」を分けて考えることが重要であり、後者で相対的に劣る商品に出る幕はない。

 一方、手数料の高い商品を売りたい金融機関の側では、投資家に[1][2][3]を混ぜて考えさせようとすることが多い。

 しかし、[2]は誰にも正しく評価できないので脇に置くとするなら、[1]の見通しが良くても悪くても、[3]で劣る商品は同じアセットクラスの商品に「常に相対的に劣る」ことになる。筆者が、既存の投資信託商品の9割以上は「はじめから検討にすら値しない」と自信を持って言い切るのは、これが理由だ。

 筆者は、この考え方を、何度か原稿に書き、セミナーやイベントなどで話してきたが、今まで有効な反論を受けたことは一度もない。アクティブ運用を応援したいという心情は筆者も理解し共感もするが、他人に対するアドバイスとしては、良心に従うなら、明らかに手数料の高い商品を勧める訳にはいかない。

 例えば、同じ国内株式の商品であれば、年率で1%も差が付くと、評価上は「勝負にならない」と筆者は考える。

 アクティブ運用の運用者が、「手数料の差に十分見合う以上のアクティブ・リターンをかせぐ自信がある」というなら、彼(彼女)は、他人のお金ではなく、自分のお金を運用している方が自然だ。