「ほったらかし投資術」の定義と手順

 現在の「ほったらかし投資術」についてまとめておこう。

 まず、「ほったらかし投資」の定義だが、

(1)誰でもできるくらい簡単で、
(2)かけるべき手間がごく少なく、同時に
(3)合理的でもある投資方法

 のことを指す言葉だと考えたい。もっと短くまとめると、「簡単・少手間・合理的」な投資だ。

 具体的な手順は、以下の通りだ。

【手順1】生活に必要な資金を別途確保する

 借金をするような事態には至らないですむような金額を確保する。置き場所は銀行の普通預金でいい。

 この金額は、筆者の説では生活費数カ月分(例えば3カ月分)で、水瀬氏の説だと2年分くらいであり、この点は、当初から今日に至るまで二人の意見に少々差がある。

 筆者は投信なら数日で換金できるので、必要があれば部分的な解約を躊躇しない事を前提に、例えば三カ月分くらいお金を普通預金に置いておくといいのではないかと考えているが、水瀬氏は安心できる「生活防衛資金」を別途確保することの精神安定効果を重視されているようだ。

【手順2】上記以外の運用資金の中で、リスクを取ってもいいと思う金額を内外のインデックス・ファンドに投資する

 それ以外のリスクを取りたくない資産は個人向け国債変動金利型10年満期を中心に運用する。

「一年後に、最悪3分の1損する一方、最悪と同じくらいの確率で4割くらい利益が出る事があり、平均的には5%くらいの利回りを得る事ができる資産」(=リスク資産)に幾ら投資するかを決定し、これを内外の株式のインデックス・ファンドに投資する。

 運用資産に於ける「比率(%)」ではなく、リスクを取る「金額」を決める点が急所だが、これを自分で決めてしまえば、後は簡単だ。一方、この決定は他人には難しい。

 例えば毎月の積立投資を行う場合は、前月の最適リスク投資額と今月の最適リスク投資額が毎月の積立金額だけ異なるのだと理解するといい。

 インデックス・ファンドの内訳は、「外国株式(先進国中心)」を6割、「国内株式(TOPIX連動型)」を4割の配分を筆者は勧める事が多いが(注:年金運用などの機関投資家が平均的に使うリスク・リターンの前提に基づく)、近年日本株と外国株・外国為替の連動性が強まっているので、「全世界株式」1本でもいいのではないかとも思いつつある。

 変動金利型で10年満期の個人向け国債は、2010年当時から信用リスクが小さく長期金利上昇(=長期国債暴落)に強い、無難でありつつ相対的に優れた商品だったが、その後長短の金利がほぼゼロに貼りついて、ますます優秀な選択肢であり続けている。推奨する運用方法を変えずにすむのはありがたい事だが、デフレからの脱却が遅れているのは経済の状況として困った事だ。

【手順3】リスク資産について、企業型確定拠出年金、iDeCo、一般NISA、つみたてNISAなど税制上有利に運用できる制度を極力大きく利用し、こうした口座に、自分の投資全体の中からリスク資産部分を集中する

 有利な制度をできるだけ大きく使う事と、複数の口座全体を最適な状態に保ちつつ個々の口座に適切な運用商品を割り振ることがポイントだ。個々の口座は「全体の運用の中の一部」だ。

【手順4】リスク資産内の配分は追加投資・部分解約の際に緩く調節する

「外国株:国内株=6:4」といった比率を、厳密に管理する必要はない。バランスが大きく狂ったら、追加投資や部分解約のついでに、バランスを修正する方向に金額を調整するといい。「ほったらかし」の看板とは矛盾する「調節の手間」であるが、必要なケースはあまりない。