専門機関の見通しによれば、世界規模の諸問題による石油消費減少は“杞憂”

 まず、世界景気については、米中貿易戦争や英国のEU(欧州連合)離脱問題などの世界に波及する問題が鎮静化・解決に向かえば、将来の世界の石油消費が増加することが期待されます。しかし、今のところ、明確にそのような期待が高まる状況ではないと筆者は考えています。

 ただ、これらの大きな問題が解消に向けて少しずつ前進する、あるいはこれまでの想定とは異なる別の着地点を模索する、などの動きが見られれば、世界の石油の消費量が減少し、世界規模の景気後退が避けられる期待が高まります。

 このような点から、世界景気が与える原油相場への影響については“一進一退”だと考えています。

 以下は2019年3月12日(火)に、EIA(米エネルギー省)が公表した、世界の石油消費量の推移です。2019年3月から2020年12月まではEIAの見通しです。この見通しによれば、世界の石油消費量は今後も巡航速度で増加していきます。

図:世界の石油消費量の推移(2019年以降はEIAの見通し) 単位:百万バレル/日量

出所:EIAのデータをもとに筆者作成

 


 世界景気の回復を妨げるさまざまな問題はあるものの、専門機関が公表した消費見通しは“今後も増加する”というものでした。

 世界の諸問題の動向に呼応するように、市場では石油消費量が増減する期待や失望が生まれるわけですが、あくまでもそれらはまだ起きていないことへの思惑にすぎません。

 EIAの見通し寄りに考えれば、世界の石油消費は、人口増加、そして経済活動が活発化することをよしとする資本主義的な考え方がなくならない限り、減少することは考えにくく、目先数カ月間という期間においても、世界規模の複数の問題により石油の消費量が減少すると考えることは杞憂なのかもしれません。