下落率トップの武田薬品は、巨額買収発表が嫌気された

 武田薬品は、医薬品株であり、一般的には景気変動の影響を受けにくいディフェンシブ株に分類されます。ただし、2018年は、アイルランドのシャイアー社に対し、日本円で約7兆円の大型買収を発表したことが嫌気されて、株価が大きく下落しました。買収資金を調達するために新株を発行しますが、それによる利益の希薄化が嫌気されました。一般的に大型買収では、買収コストが先行し、買収シナジーは遅れて出てきます。シャイアー社の買収もそうなりそうです。

 シャイアー社は、稀少疾患や血液製剤で高い利益を上げている会社で、同社を買収することで、武田薬品の収益基盤は長期的には堅固になると考えています。ただし、短期的に買収コストが先行することを嫌気して、売られてしまったのはやむを得なかったと思います。

 武田薬品は長期的には買い場と思いますが、短期的な株価反発は見込み難いと考えます。好配当利回り株として、じっくり長期投資していく対象と考えています。

下落率第2位パナソニックは、景気敏感株として売られた

 ソニーと並び、エレクトロニクス業界で構造改革に成功した企業として高く評価しています。競争力のある白モノ家電で高い収益を上げつつ、車載用の電池などで成長が見込めると考えています。売られ過ぎの大型株として、今後、株価の反発を期待しています。

下落率第3位のファナックは、中国関連株として売られた

 ファナックは産業用ロボット世界トップで、これからもロボット事業で成長が期待できます。また、工作機械向けの*CNC装置でも高い収益力を有します。株主還元に積極的で、配当利回りが高く、自社株買いにも積極的です。長期的には買っていいゾーンに入っていると思います。ただし、今すぐ買うのは時期尚早と思います。

 ファナックは中国関連・設備投資関連株の代表で、中国で設備投資に急ブレーキがかかっている影響を大きく受けるため、今期(2019年3月期)だけでなく、来期(2020年3月期)も減益が続く可能性があります。今後、業績がどこまで落ち込むか見極めてから投資する必要があります。

 ただし今後、米中貿易戦争が何らかの「落としどころ」に向かう期待が出る時には、中国の設備投資が盛り返すと考えられますので、真っ先に投資したい銘柄です。

* CNC装置=機械工作において工具の移動量や移動速度などをコンピューターによって制御する装置。同一手順の繰り返しや、複雑な形状の加工などの工作機械で多く採用されている)

下落率第4位の三菱UFJ FGは、低金利の長期化を嫌気して売られた

 銀行株は2018年、低金利の長期化で、国内商業銀行業務の利ざやが低下する不安から、軒並み売られました。私は、3メガ銀行(三菱UFJ FG、三井住友FG、みずほFG)については、売られ過ぎと考えています。海外収益の拡大と、ユニバーサルバンク経営(証券、信託、リースなど複合経営)によって、高収益を維持していけると判断しているからです。中でも、海外収益の拡大で先行している、三菱UFGの投資魅力が一番高いと判断しています。

下落率第5位の日立製作所は、景気敏感株として売られた

 日立製作所も、景気敏感株として下落率が高くなりました。短期的には売られ過ぎと考えています。ただし、長期的には、やや懸念される材料もあり、ソニーやパナソニックほど積極的に投資したいとは考えていません。

 日立も、事業構造改革に成功した総合電機として、高く評価されてきました。ただし最近、ビジネス・ポートフォリオにやや不安が出ています。1つは、石炭火力発電の収益性が低下していること。もう1つは、内外で原子力発電事業を行っていることです。