政府・日銀の為替介入観測、為替相場は乱高下

 ゴールデンウイーク後の日経平均株価とTOPIX(東証株価指数)は、上に行くのか下に行くのかわからない、方向感に乏しい状況が続いています。市場では、政府・日本銀行が4月29日と5月2日に円買いドル売り介入に動いたとの観測が広がり、為替相場は乱高下しました。

 4月29日に1ドル=160円まで円安ドル高が進行していましたが、5月3日の米雇用統計が発表された直後には1ドル=151円まで円高ドル安が進行しました。5日間で9円という超絶な円高ドル安進行です。足元では1ドル=156円水準で推移していますが、輸出企業が多い日本株は「円安=株高」というイメージが強いので、今は様子を見るしかない状況です。

決算を予測して売買する「決算プレイ」は投機的?

 ちょうど5月上旬から中旬にかけては、3月期決算銘柄を中心に決算発表のピークを迎えていることから、日経平均やTOPIXなど指数をベースとしたETF(上場投資信託)よりは決算発表銘柄に関心が向かいがちです。

 時価総額が大きいプライム市場の大型株でも、決算を発表した後は10%ほど株価が動くケースが多いので、短期的には指数を売買するよりも大きな「サヤ(利益幅)」を抜くことができます。決算発表前後の株価の上昇や下落を予測し、先回りして株を売買する、いわゆる「決算プレイ」は人気ですが、決算の内容を見極めるのは至難の業です。

 決算プレイは、「投資」というよりは上下どちらに動くかを予想するので、「投機」の側面の方が強いでしょう。これまでの四半期ごとに発表される決算短信を何年分も読み解いて、業績が好調なのか、業績悪化するのかを予測することは可能かもしれません。

 ですが、企業業績には、為替や世界情勢や関連する市況など様々な要因が複雑に関係します。となると、どうしても予想の要素が多くなってしまいますので「投資」よりも「投機」になってしまうでしょう。

 上下のどちらかにベット(カジノ用語で「賭け」の意味)する投機は、精神が研ぎ澄まされた感覚がして非常に面白い時間を過ごすことができます。私も経験がありますので分かります。米雇用統計発表前後のFX(為替証拠金取引)は、緊迫感のある時間を過ごせますし、日本銀行の金融政策決定会合の結果発表はそもそも発表時間が決まっていないので、よりピリピリした時間を過ごすことができます。

 個人的にも、こうした緊迫感は非常に楽しいですが、どうしても投機の域は抜け出せられません。やはり事実情報を基に今後の業績を分析して、「売り買い」を判断するのが投資でしょうし、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)を生かした中長期投資をするべきでしょう。決して決算プレイを否定しているわけではありませんが、無くなってもいい資金源で行うことをお薦めします。

田代くんの気になる5銘柄はコレ!【NISAで中長期投資】3月期決算発表から選ぶ、好業績×高配当銘柄

 ですから、主要企業の2024年3月期決算発表がピークを迎える今、上下にベットするような決算プレイで一喜一憂するのではなく、発表された決算内容を確認し中長期的に投資するスタンスをお薦めします。NISAは中長期投資に適した制度なので、好業績見通しで高配当利回りというテーマは鉄板でしょう。

 今回ご紹介する5銘柄は5月10日までに決算発表を行った銘柄から抽出しました。基本的には、好業績かつ配当利回りが高い銘柄を押さえておきたいと思います。2024年3月期決算銘柄で、配当利回りが3.5%以上、前期(2024年3月期)および今期(2025年3月期)の営業利益が2桁増益の5銘柄をご紹介します。

銘柄名 証券コード 株価(円)
(5月15日終値)
ポイント
世紀東急工業 1898 1,665 今期も高速道路など大型舗装工事を受注
ハードオフ
コーポレーション
2674 1,899 既存店売上高今期も好調継続中
日本ヒューム 5262 963 コンクリートパイルの受注残高が堅調に増加
TOA 6809 1,116 生成AI搭載サービスが今期業績に影響を与えるか注目
新明和工業 7224 1,322 防衛関連銘柄の一角だが、実はパーキングシステム事業が好調

世紀東急工業(1898)

 東急グループの道路舗装大手企業です。前期業績は、当初の計画をやや下回りましたが、それでも営業利益、経常利益は前の期比50%以上の増加となりました。人件費増や原材料高にもかかわらず、今期も各利益は前期比30%台の増加を見込んでいます。

 また、東海環状自動車道や東北自動車道など大型舗装工事の受注により前期末時点の受注高は前の期比4.0%増の959億円と堅調に積み上がっていますので、引き続き好業績が期待できるでしょう。

 株価は決算発表のタイミングで特別損失の計上などが嫌気されて下落しましたが、会社予想配当で計算した配当利回りは5%台と非常に高いので、足元の好業績と加えて見直される展開に期待します。

ハードオフコーポレーション(2674)

 パソコンや音響などのリユース業を展開する新潟県の企業です。前期は既存店売上高が好調に推移したことで、各利益は前の期比20%前後の増加で着地しました。配当予想も前回予想から増やしました。足元では、2024年4月の既存店売上高が前年同月比2.1倍と好調を維持。今期営業利益も前期比2桁増を見込んでいます。

 株価は好業績を受けて上昇が目立っており、上場来高値(株式分割考慮)を更新しています。高値を更新していることから、戻り待ちの売りが存在しない状況ですので需給面も良好です。

日本ヒューム(5262)

 下水道や上水道、農業用水などに利用されるヒューム管やコンクリートパイル(杭)が主力製品です。コンクリートパイルの受注を伸ばしたことで、前期の各利益は前の期比2桁増での着地となりました。今期営業利益は前期の増益率(11.8%増)を上回る23.0%増を見込むなど、引き続き好業績が期待できそうです。

 株価は年初来高値を更新しており、2023年12月につけた高値964円の更新を試す強い展開となっています。また、PBR(株価純資産倍率)は0.5倍台に据え置かれていることから、低PBR対策も期待できますので、右肩上がりの展開は続くと考えます。

TOA(6809)

 マイク、スピーカーなど音響設備とセキュリティシステムを展開しています。国内工場や空港など交通市場向けの販売が上伸したことから、前期営業利益と経常利益は前の期比70%超の大幅な増益となりました。

 今期営業利益は前期比22.2%増と引き続き好調を見込んでいます。パソコンに文章を入力するだけで簡単に放送アナウンス音源を作成できる生成AI(人工知能)搭載のサービス「YUTTE」が業績にどれだけ寄与するか注目します。

 好業績への期待感が非常に高かったことから、今期業績見通しの鈍化が嫌気されて決算発表以降の株価はさえない推移となっています。ただ、PBRは0.7倍台に据え置かれていることから、低PBR対策が期待できますので、右肩上がりのトレンドは続くと考えます。

新明和工業(7224)

 ダンプなどの特装車が主力ですが、水陸両用飛行艇「US-2」が救難飛行艇として防衛省で運用されていることから、株式市場では防衛関連銘柄の一角として知られています。前期末時点の受注残高は前の期末比13.9%増、今期営業利益も前期比2桁増を見込んでいます。機械式駐車場設備の受注が大幅に増加しており、パーキングシステムが業績のけん引役となっているようです。

 株価は年初来高値を更新しており、2023年9月につけた高値1,475円を意識した展開となっています。PBRは0.8倍台ですので、株主還元策など株価を意識した低PBR対策にも期待できます。