貿易戦争の不安はやや低下したものの、米金利上昇の不安は継続

 トランプ大統領が仕掛ける貿易戦争は、日本にとってそんなに悪い結末にならないとの見方が広がってきています。日本は、農産物などでさらなる市場開放を迫られる可能性がありますが、自動車輸出に高関税が課せられるリスクは減少したと考えられます。

 米中貿易戦争はエスカレートしつつありますが、それでも全面戦争にならないぎりぎりのラインで交渉が続いています。米国の圧力で中国市場がより開放されると、日本にとってはメリットとなります。まだ不透明要因は多いものの、貿易戦争によってダメージを受ける不安は、足元やや低下したと見られています。

 ただし、米金利上昇の不安はまだ続いています。9月に続いて12月にも米利上げが見込まれていることから、金利上昇に伴う不安は簡単には払拭されそうにありません。

 

9月の雇用統計は、強いと解釈される

 10月5日に発表された9月の米雇用統計は、強いと解釈されました。完全失業率が前月比0.2ポイント低下の3.7%となったためです。平均時給が前年比で2.8%伸びていることも、雇用情勢が強いことを示しています。

米雇用統計「完全失業率」の推移:2014年1月~2018年9月

出所:米労働省

 

 短期的な米景気の動向をよく表すとして注目が高い「非農業部門の雇用者数」は、前月比で13万4,000人の増加でした。景気好調とみなされる20万人増を下回っていました。

 

米雇用統計:非農業部門の雇用者増加数の推移:2014年1月~2018年9月

出所:米労働省

 それでも、米雇用情勢が強いとの見方は、変わりません。完全失業率が3.7%まで下がり、米国は今、「実質完全雇用」とみなされます。完全雇用に近い状態では、雇用者増加数が13万人増でも十分強いと見ることもできます。

 米雇用が好調で賃金が上昇しつつあることから、FRB(米連邦準備制度理事会)は、12月も利上げを行うとの見方が広まっています。