9月7日
当局が短期保険商品の規制強化を発表、大手への影響は限定的

中国保険監督管理委員会(CIRC)が、短期の保険商品、特にユニバーサル保険商品の販売やリスク管理を強化する新規制を明らかにした。BOCIは今回の規制が過熱する短期保険商品販売の沈静化につながり、主に非上場の中規模生保の打撃となる一方で、上場大手生保への影響は限定的とみている。これを踏まえ生保セクターの懸念事項として、金融緩和の状況下で一部の大手に見られる資産・負債のデュレーション(資産運用における投資期間と保険金支払いまでの期間)のミスマッチを指摘した。個別では新華人寿保険(01336)、中国太平洋保険(02601)、中国平安保険(02318)を選好している。

CIRCは9月6日、ユニバーサル保険を含む生命保険商品の規制を強化する2件の規定を制定した。支払い保険料に対する満期保障額割合の年齢層別引き上げや、ユニバーサル保険商品の最低保証利率の引き下げ(3.5%→3.0%)、全保険料収入に占める短期商品保険料の割合の段階的引き下げ(2019年以降)など数値に関わる規制に加え、販売に関する規制も強化された。

新たな規制は、特に非上場の中規模生保が扱う高利回りの短期ユニバーサル保険商品の販売に影響する見通し。CIRCの統計によると、ユニバーサル生保商品のポリシーフィー(保険証券発行手数料)は過去2年間にほぼ3倍に拡大。中堅生保による販売増の影響とみられている。また、こうした企業が保険販売で得た資金を上場企業株式の大量購入に投じていた点も指摘されている。

BOCIは今回の規制強化が大手生保に与える影響は限定的と判断。大手生保の懸念事項として以下の2点を挙げた。1)資産・負債のデュレーション(資産運用における投資期間と保険金支払いまでの期間)のミスマッチ、2)金融緩和環境の中、過去数年に販売した補償額の高い長期保険商品の負債コスト上昇による、新契約価値(VNB)およびEV(エンベデッドバリュー:保険会社の企業価値を示す指標)の下振れリスク。

BOCIは、保険負債のコントロールが引き続き大手生保の最重要課題と指摘。保険料収入と負債リスク管理コストのバランスを維持することが肝要だが、未発達な中国債権市場では長期債による安定した資産運用がままならず、中国大手生保の長期成長のボトルネックになっているとした。

保険セクターは現在、16年予想P/EV1.0倍以下と低いバリュエーションで取引されている。BOCIは投資家に対し、長期的なEV/VNBの下振れリスクを考慮しつつ、各社個別の成長サイクルを踏まえた銘柄を選定。製品構成の改善に向けたタイミングにある新華人寿保険、多角化で低金利でもリスクの低い中国平安保険、長期的に健全性の高い事業に注力する中国太平洋保険を選好している。セクター全体のリスク要因として、本土A株市場の再評価、国内の金利上昇の可能性を挙げた。