インフラ建設大手3社の一段の株価回復に期待、工業株では海天国際が焦点

 中国の国有インフラ銘柄は最近の株価上昇により、年初来高値圏に復帰した。全体相場に対するアウトパフォームを支えたのは、これまでの低バリュエーションや、政府が導入した時価総額およびバリュエーションの管理目標。インフラ建設(ゼネコン)大手3社、中国中鉄(00390)、中国鉄建(01186)、中国交通建設(01800)の株価は現在、2024年予想PBR(株価純資産倍率)で0.21-0.26倍と、1倍を大きく割り込む水準にあり、0.7-1.0倍への押し上げを目指した一段の修復余地が大きい。BOCIは全体相場の上昇が続く前提の下、この3社の株価の先行きに対して強気見通しを付与。半面、不安定な相場展開となった場合には、世界的な需要回復を追い風とする射出成形機メーカー大手、海天国際(01882)を選好するとしている。

 市場のセンチメントと利益見通しの後退を受け、ゼネコン大手3社の2024年予想PBRは最近の株価急伸後も、わずか0.21-0.26倍にとどまる。ただ最近、国有企業のPBRを1倍に引き上げるよう求める指針が発表されたことで、インフラ関連銘柄の再評価が進み、ゼネコンと機械メーカーの株価が上昇した。PBRを0.5-0.8倍に戻すだけでも、株価の上昇余地は大きい。

 長期視点に立てば、株価を左右するのはファンダメンタルズ。2024年4-6月以降は地方政府の資金難を背景に、新規受注と工事の進捗(しんちょく)状況がスローダウンしている。地方政府は主に土地販売収入に財源を依存しており、インフラ投資を問題なく進められるのは1線都市(4大都市)と2線都市の一部に限られるのが現状。代金支払いが滞っていることで、ゼネコン側は工事の停止やペースダウンを余儀なくされている。BOCIは不動産市況が持ち直すまで、短期的にはこうした状況の改善は期待しにくいとの見方。新規受注の縮小傾向が2025年1-3月期まで続く可能性を指摘している。

 実際、不動産投資とインフラ投資は、産業全体のバリューチェーンの原動力であり、雇用や所得にも影響する。BOCIによれば、いつ、どの程度、ファンダメンタルズが改善するかが、関連銘柄の再評価の度合いを左右する見通しという。

 個別の工業銘柄を見ると、海天国際は世界シェアの拡大が見込める数少ない工業株の一つ。海外生産拠点の増強により、世界展開が第2段階を迎えつつある。国内の新規受注は減速する可能性があるが、米国の利下げサイクル入りで、世界需要は回復する見通し。海外売り上げ比率は現在31%だが、長期的には50%への上昇が見込まれている。

 一方のゼネコン大手3社、中国中鉄、中国鉄建、中国交通建設の現在株価の2024年予想PER(株価収益率)は2.83倍、2.87倍、2.74倍と、ヒストリカル平均を大きく下回る水準にあり、ほかに鉄道車両最大手の中国中車(01766)が同9.2倍。BOCIはこれら銘柄と、海天国際の株価の先行きに対して強気見通しを継続している。