米ナイキが弱気の業績見通し発表、中国の小売市況低迷で川下部門苦戦か 

 米ナイキは6月下旬、市場予想を下回る弱気の業績見通しを発表したが、BOCIは同社を取り巻く問題が予想以上に深刻である可能性を指摘している。欧米と中国で需要低迷に直面し、再び軌道に乗せるまでには1-2年を要するとの見方。これがサプライヤー各社の受注に影響する可能性があるとした。産業チェーン全体を見渡した場合、特に中国市場では、川下の小売部門が厳しいとの見解。半面、上流のOEM(相手先ブランドの受託製造)大手は受注構成を調整するだけの多様性を持つとして、相対的に楽観見通しを示している。個別では、ナイキ、アディダスなどを顧客とするOEM大手の申洲国際集団(02313)の収益見通しを楽観。下流では、ナイキの苦戦が間接的に安踏体育用品(02020)にプラスとなる可能性を指摘しながらも、中国の小売市況そのものが厳しい状況にあるとして、短期的にはより慎重なスタンスを取るとしている。

 ナイキは6月27日、2025年度(2024年6月-2025年5月)の売上高が前年比で1桁台半ばの落ち込みとなる見通しを示した。市場の予想を大きく下回るガイダンスとなった。

 BOCIはナイキの減収見通しについて、以下の点を挙げている。◇ライフスタイル製品の偏重と機能性製品への投資不足、◇米国でのマーケティングキャンペーンに対する否定的なフィードバック、◇特に中国市場で顕著となっている消費者の低価格指向、◇過度なD2C(顧客向け直接販売)重視戦略を受けた卸売りパートナーの伸び悩み。

 ナイキによる弱気のガイダンスを受け、マーケットでは川上のOEM受注の減速懸念が高まっているが、BOCIは他ブランドからの受注でカバーできるとし、影響は相対的に軽微とみている。実際、アパレル、靴の双方で、多くのOEMが7-9月期にプラス成長を確保したという。申洲国際集団をはじめ、OEM各社が目指すのは受注の正常化と継続的な拡張であり、大手の年産能力は東南アジアへの投資を通じ、年率約10%拡大する見込み。稼働率の改善と効率化を理由に、2024-25年の利益成長を楽観視している。

 対照的に、川下のビジネス環境は厳しく、中国の小売市場は7-9月期も低調。ネット通販の一大セール「ダブルイレブン」が到来する10-12月期にはさらに競争が激化する可能性が高い。BOCIは◇安踏体育用品や特歩国際(01368)など、ターゲティングが明確な国内ブランド、◇HOKAやサロモンなど、ハイエンドのパフォーマンスブランド――のアウトパフォームを見込む半面、アスレジャー製品主体のブランド(アディダスやルルレモン)に関しては、収益見通しの不透明感が相対的に強いとしている。

 ナイキ、アディダス製品などを扱う中国のスポーツウエア販売最大手、滔搏国際(06110)はすでに8月中間期の業績悪化見通しを発表済み。低価格指向を強める消費者がオンラインに依存した結果、実店舗の来客数が低迷しているもよう。BOCIは10-12月にはさらに厳しさを増すとみて、同社の業績に対し、より慎重見通しに傾いている。