6月14日
低バリュエーションも長期の逆ざや懸念が重し、EVや利益に下振れリスク

BOCIが16年2月末、保険セクターに対する先行き見通しを強気から中立的に引き下げた後、保険銘柄は全体相場をアンダーパフォームし、個別では中国人寿保険(02628)、中国太平保険控股(00966)が騰落率下位となった。BOCIは保険料収入の大幅な伸びや資産・負債のデュレーション(資産運用における投資期間と保険金支払いまでの期間)のミスマッチに起因する投資リスクの高まりを指摘し、セクター全体に対して引き続き慎重。現在株価の低バリュエーションに言及しながらも、向こう12カ月間のEV(エンベデッドバリュー:保険会社の企業価値を示す指標)および利益の下振れリスクを指摘し、持続的な再評価を支えるだけの支援材料に欠けるとしている。

BOCIのリサーチによれば、大手生保各社は4月以降、保険料収入の増加ペースを自主的に抑制し、「保証利率を引き下げる」あるいは「従来型長期商品を短期配当付保険あるいはユニバーサル型商品(保険利率が相対的に低い)にシフトさせる」などの手段で保険料構成比の調整を進めている。ただ、現在の低金利環境の下ではいずれにせよ、資産・負債のデュレーションミスマッチの解消が最大の課題になるという。

預金利率やマネーサプライM2伸び率、10年物債券イールド、さらに主要株価指標の上海総合指数がここに来て安定化の兆しを見せる中、保険銘柄の株価EV倍率は1.0倍を下回る低水準にあり、一部の投資家は保険セクターに対して強気の見方に転じている。ただ、BOCIは中国の相対的な緩和環境が終わり、保険各社の投資収益見通しが好転したと見るのは時期尚早との見解。国内債券市場が未発達であることが、生保系銘柄などの資産運用の足かせとなっている現状を指摘した。

また、生保系銘柄は厳しい資産運用環境や資産・負債デュレーションのミスマッチを背景に、16年のEV算出において投資リターン想定値の下方修正を迫られるとみている。BOCIはセクター全体で50ベーシスポイントの想定値引き下げが行われると予想。個別では中国人寿保険(02628)にとって、想定値引き下げによるEVへの影響(-8.7%)が特に大きいとの見方。一方、新契約価値(VNB)に関しては、中国人民保険(01339)グループの生保部門が受けるマイナス影響が最も大きいとみている。

BOCIは保険セクターの年初からの株価調整と現在の低バリュエーションに触れながらも、長期的な逆ざや懸念を指摘。継続的な再評価に期待するだけの材料に欠けるとみて、セクター全体に対する中立見通しを据え置いた。個別では中国太平洋保険(02601)、新華人寿保険(01336)、中国平安保険(02318)、中国人民保険(01339)の株価の先行きに対して強気である一方、中国人民財産保険(02328)、中国人寿保険(02628)、中国太平保険控股(00966)に対しては中立見通しを示している。