4月11日
政府当局がリスク管理規定を大幅改定へ、長期的には業界全体にプラス

中国証券監督管理委員会(CSRC)は4月8日、「証券会社リスクコントロール指標管理方法」(以下、「管理方法」)の改定に向け、5月8日までの1カ月間に関係者から意見聴取を行うと発表した。2006年に施行されて以来、08年、12年に改定を実施したが、BOCIはこれまでで最も大きな改定になるとみている。主な改定予定箇所は以下の通り。

【1】純資本の計算方法の見直し:純資本をコア純資本と補完的資本に再分類。二重計算を避けるため、純資本から加重金融資産を控除する方法を廃止する。【2】リスク資本準備の計算方法の見直し:より包括的なリスクプロファイルの提供に向け、加重係数を改良する。ヘッジ資産の定義を会計ベースから実際のリスクヘッジベースに変更。さらに高評価の証券会社(CSRCによる評価)を優遇している算出要素を従来比で抑える。【3】純資本/負債比率、純資産/負債比率という2つの指標を一本化する形で、新たな指標「オンバランスおよびオフバランスの資産総額に対するコア純資本の比率」を導入し、この比率が8%を下回ってはならないと規定する。【4】中国証券業協会(SAC)が14年に規定した流動性カバレッジレシオ(LCR)および純安定調達比率(NSFR)を管理指標に含める。【5】市場情勢の変化に対応できるよう、CSRCが指標要件や計算方法をダイナミックに調整することを認める――。

BOCIによれば、今回の「管理方法」改定の目的は、証券会社のリスク内容をより包括的に把握すること。一方で、加重係数の見直しという点から、リスク資産に対するリスク評価の厳格化を指摘した。また、委託売買や投資銀行、資産運用など各部門の収益に基づいてリスク資本準備を求める点から、リスクプロファイル指標がこれまでより明確になったとしている。こうした関連規定の改定を受け、短期的には証券各社のリスク回避志向が強まるとしながらも、長期的にはリスクリワード・バランスの改善が証券各社の持続的かつ賢明な利益モデルの構築を促す点でプラスになるとの見方。結果的に資本市場の安定化に寄与するとみている。

ほかに目立つ改正ポイントはレバレッジ規定の緩和。「オンおよびオフバランス資産総額に対するコア純資本の比率」の下限を8%としたほか、純資本/純資産比率の下限を40%から20%に緩和、純資産/負債比率の下限を20%から10%に緩和するとした。ただ、BOCIは現在の相場環境や信用取引業務に対する規制強化などを理由に、下限規定の緩和が短期的なレバレッジ拡大につながるわけではないとしている。

このほか、BOCIはリスク指標の計算方法の変更により、過去との比較が難しくなるとしながらも、15年末の資本レベルの健全性を理由に全般的な資本圧力は小さいとみている。また、「管理方法」改定を長期的視点から前向きに評価。セクター全体に対する強気のレーティングを継続し、個別では華泰証券(06886)をトップピックとしている。