11月3日
景気減速・自由化・改革に直面、この先の利ざや縮小や不良債権リスクの高まりを予想
中国本土の銀行セクターでは15年7-9月期も利益成長率の減速トレンドが続いた。徽商銀行(03698)、ハルビン銀行(06138)、重慶銀行(01963)を除く上場銀行銘柄の7-9月の増益率は前年同期比1.57%と、1-3月期の同3.25%、4-6月期の同1.65%から一段と鈍化した。国内経済の減速やA株市場の急落、相次ぐ利下げ、金利自由化に直面する中、銀行各行は資産規模の拡大や手数料業務の強化、資産負債構成の調整、経費削減を通じて、かろうじて利益成長を確保する形となった。BOCIはこの先、◇景気減速や資本市場の発展を受けた融資需要の後退で、銀行資産の拡大にブレーキがかかる、◇相次ぐ利下げと金利自由化で、純金利マージン(NIM)が一段と縮小する、◇経済構造改革の下、不良債権化リスクがさらに高まる――と予想。新規の不良債権比率に関する16-17年の想定値を引き上げ、セクター全体の利益見通しをそれぞれ平均6%、11%減額修正した。また、H株、A株銀行セクターの現在株価が15年予想PBR(株価純資産倍率)でそれぞれ平均0.8倍、1.05倍の水準にあるとし、H株、A株双方について中立見通しを示している。
7-9月期には引当金が前年同期比68%膨らむ中、セクター全体で小幅の利益成長を確保したが、これは金利収益資産(IEA)の前年同期比12.5%の伸びや、NIMの縮小率を前期比1ベーシスポイントに抑えたことなどが理由。さらに手数料収入の力強い伸びやコスト管理の強化も増益に寄与した。
銀行銘柄の7-9月期の不良債権比率は1.51%と、前期の1.44%からさらに悪化。期末の引当率は185%と、6月末の191%から後退した。BOCIはこの先一段の悪化を見込み16年、17年の不良債権比率、信用コスト比率などに関する想定値を引き上げている。
一方、利下げの影響が出るまでにはタイムラグがあり、7-9月期の段階では預金準備率引き下げや各行の資産負債構成の調整がNIMを下支えしたが、BOCIによると、16年上期にはNIMが2.26%(15年上期2.51%)まで縮小する見込み。流動性の改善やハイリターン資産の減少、資金コストの低下余地が限られることなどがその理由という。
BOCIは諸外国の先例に目を向け、「商業銀行は金融市場の自由化を受けた競争局面で積極的にリスクを取り、より高いリターンを目指す傾向が強い」と指摘。結果としてリスクが高まり、自由化後に金融危機を招くケースも見られたとした。中国銀行セクターの場合は、景気減速、経済モデルのシフト、金融システム改革といった複数の変化に直面しているのが現状。BOCIは銀行、投資家の双方に、短期的な利益成長率だけに目を向けるべきではないと指摘している。一方、個別では、AH重複上場の中国銀行(03988)、中国建設銀行(00939)、交通銀行(03328)や、上海上場の興業銀行(601166)、北京銀行(601169)を選好。この5銘柄の株価の先行きに対して強気見通しを示している。