10月15日
通信キャリア3社が合弁会社に2139億元の鉄塔資産注入、小規模2社にプラス
中国の通信キャリア3社は10月14日、合弁会社「中国鉄塔股フン有限公司」(CTC)に自社の鉄塔資産を注入したと発表した。BOCIは3社による注入資産の評価額を適正水準と受け止め、一連の取引が相対的に規模の小さい2社、中国聯通(香港)(チャイナ・ユニコム:00762)、中国電信(チャイナ・テレコム:00728)に有利になるとの見方。さらに一部インフラがサービス運営部門から切り離されたことで、この先、関連規定の透明度が高まる可能性を指摘し、通信セクターに対する強気のレーティングを維持した。個別ではチャイナ・ユニコム、チャイナ・テレコムの株価の先行きに対して強気見通しを、中国移動(香港)(チャイナ・モバイル:00941)には中立見通しを継続した。
BOCIによると、キャリア3社がCTCに注入する基地局は推定140万カ所。代金は総額2139億元で、簿価を19%上回る水準となる。増資後のCTCに対する持ち株比率はモバイルが38.0%、ユニコムが28.1%、テレコムが27.9%で、残り6.0%を中国国新控股(China Reform Corp)が保有する運びとなる。
チャイナ・モバイルとチャイナ・ユニコムは資産の対価として、現金650億元、250億元と、CTCの新株を受け取る見込み。一方、注入資産の少ないテレコムはCTCに対する持ち株比率27.9%を維持するため、現金31億3100万元をCTCに支払う見通し。
BOCIはこの取引の評価額を適正と受け止め、キャリア3社がこの先CTCに支払う設備リース料も適正水準に設定されると予想。その上で、この取引がユニコムおよびテレコムに有利になるとみている。相対的に規模の小さいこの2社は今後、4Gネットワークの運営において大きくCTCに依存することになる。
資産注入に伴うユニコムの売却益は、15年予想税引き前利益の37%相当に上る見込み。テレコムの場合、この割合は13.8%となる。また、ユニコムにとっては推定250億元の現金受け取りも、今後の設備投資に向けた資金確保の点でプラス。テレコムは持ち株比率の維持に向けてCTCに現金を支払うものの、長期の配当確保が可能となる。
ワイヤレスネットワークの整備においては特に大都市部でのロケーションの確保が難関となるが、ユニコムとテレコムはそのために投資額を積み増すことなく、すでに整えられた140万規模の基地局資産を相対的に低コストで利用することが可能となる。最大手チャイナ・モバイルのネットワークは過去20年間、数量、ロケーションの両面で優位にあったが、他2社もネットワークの質でチャイナ・モバイルに迫ることになる。
一方、BOCIによると、通信セクターの潜在リスク要因は、携帯普及率が100%を超える成熟市場の中国で、積極的な4Gネットワーク整備や顧客獲得活動が競争激化を招く可能性。他にサービス料引き下げを求めるメディアからの圧力や政府による関連規定の導入が、セクター全体の採算に影響する可能性が挙げられるという。