8月11日
供給過剰で一段の原油安を予想、中国メジャー3社の利益見通しを大幅下方修正
5月まで回復傾向にあった国際原油相場が6月半ば以降再び下げる展開となり、マーケットはこの先予想されるイラン産原油の市場復帰を警戒している。一方、OPEC(石油輸出国機構)と米シェールオイル生産者との戦いは一段と白熱化している状況。OPECが生産量を増やす一方、シェール生産者はコスト削減で価格抵抗力を強化している。BOCIは原油の供給過剰感を指摘した上で、この先一段の価格下落は避けられないとの見方。原油価格の想定値を引き下げるとともに、中国の石油メジャー3社の目標株価を一斉に下方修正した。石油セクターに対する従来の中立見通しを弱気に引き下げている。
OPECは年初から6月末までに原油日産量を116万バレル引き上げ、3170万バレルとした。これは原油相場が1バレル=110米ドルの水準にあった2012年5月以来の高水準。さらに核合意にこぎ着けたイランは、タンカーに積み込み済みの原油約4000万バレルを16年初めまでに輸出する運び。その後も定期ベースで1日220万バレル規模の輸出を継続するとみられている。
一方、米シェールオイル生産者がコスト削減を強化する中、大手(日産5万バレル以上)の平均生産コストは14年第3四半期の1バレル当たり49.4米ドルから、15年第1四半期には45.7米ドルに低下。中小(同5万バレル未満)の平均生産コストもこの間に59.8米ドルから55.3米ドルに下がり、原油相場の軟化に対する抵抗力が高まった。
BOCIはイランによる供給増を除外しても、向こう4四半期にわたって世界市場で1日133万バレルの余剰が生じるとの見方。今後6-12カ月について原油相場の軟調を予想し、ICEブレント原油の価格見通しを大幅に引き下げた。15年、16年、17年の予想値をそれぞれ55バレル(修正前63バレル)、48バレル(同77バレル)、52バレル(同80バレル)としている。
一方、中国では政府当局がガソリン、軽油などの品質管理基準を厳格化しており、これは国内の精製事業者にプラス。ただ、この先予想される天然ガス価格値下げは、特に最大手の中国石油天然気(ペトロチャイナ:00857)にとって痛手となる。
原油相場見通しの大幅引き下げに伴い、BOCIは石油メジャー3社の15年の利益見通しをそれぞれ19-30%下方修正。16-17年に関しても50-66%の幅で引き下げた(天然ガス値下げは今のところ利益モデルに組み込んでいない)。メジャー3社のうち、ペトロチャイナと中国石油化工(シノペック:00386)の株価の先行きに対しては従来の強気見通しを中立的に修正。中国海洋石油(CNNOC:00883)については中立見通しを継続した。中でも原油安が直接的な打撃となるのはCNNOC。同社は14年にカナダと北海の資産をめぐって減損損失を計上したが、BOCIは原油が高かったタイミングで同社が関連資産を取得したことに言及。さらなる減損処理を迫られる可能性を指摘した。