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利上げを気にし過ぎるリスク
堀古 英司
ウォール街から~米国株の魅力~
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーである堀古英司氏による週刊レポート。単なる分析にとどまらず、出来るだけ「裏を読む」という観点で米国経済、市場についてお伝えするコーナーで…

利上げを気にし過ぎるリスク

2015/6/1
金融危機時、一時10%に上ったアメリカの失業率は昨年秋以降、2008年9月リーマンショック前の水準にまで低下しています。非伝統的金融政策-量的緩和-は金融危機を受けた緊急的措置であったため、当然のごとく昨年秋で終了。
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金融危機時、一時10%に上ったアメリカの失業率は昨年秋以降、2008年9月リーマンショック前の水準にまで低下しています。非伝統的金融政策-量的緩和-は金融危機を受けた緊急的措置であったため、当然のごとく昨年秋で終了。その後も雇用情勢は改善を続ける中、市場の関心はFRBの次の一手、即ち利上げの時期に集まっています。ただ、確かにFRBの動向は債券はもちろん、株式や為替市場に大きな影響を与えるのですが、今回の場合はやや市場の関心が行き過ぎで、要するに利上げを気にし過ぎの兆候が見られます。

市場が利上げを気にし過ぎる理由は第一に、今年利上げが実施されれば9年以上ぶりであり、過去の利上げ局面の記憶に乏しいことや、市場関係者の一部には「利上げ局面は初めて」という人もいて、何が起こるか分からないという不透明感があるからでしょう。第二に、利上げが実施される時期に関する不透明性です。例えば現在、ウォール街のエコノミストが予想する利上げ時期のコンセンサスは今年9月ですが、シカゴ・マーカンタイル取引所で取引されているフェデラルファンド金利先物市場の取引値(5/29時点)から計算すると、利上げの確率が初めて50%を超えるのは今年12月です。しかも来年3月でも80%で、市場は来年春になっても、利上げが実施されていることに確固たる自信を持っているわけではない、ということです。

一方で市場の関心が行き過ぎている理由は恐らく、今年1-3月期に悪天候、ドル高、原油安という、いずれも一時的要因がアメリカの景気を押し下げましたが(GDP改定値はマイナス0.7%)、その結果現在表れている反動高をそのまま受けてしまっているからでしょう。その証拠に、債券市場も年初来、それらがあたかも一時的要因でないような上下動を繰り返しています。このように現在、FRBの次の一手、即ち利上げをめぐって市場自体が揺れている状況ですので、雰囲気に惑わされず、本質を見極めることが非常に重要と考えています。

そこでまず株式に関して、過去の利上げ局面でどのようなパフォーマンスとなっていたかをお示ししましょう。現在は市場のコンセンサスによると、利上げ6カ月前に近いタイミングです。1990年以降、最初の利上げとなったのは1994年2月、1999年6月、2004年6月の3回ですが、各局面での利上げ6カ月前から利上げまでのS&P500指数の騰落率を見てみると、+2.8%から+11.4%までバラツキはあるものの、全てプラスになっています。半年でこの数字ですから、年換算すると無視できない上昇率になります。上記の通り、利上げに対する市場の警戒感は強いものの、そのような警戒感とは裏腹に、歴史的に利上げ前の株式相場は強いものなのです。ちなみに過去3回について利上げ後1年間の騰落率を見てみても、全てプラスになっています。

9年以上ぶりということで市場の関心は利上げのマイナス面ばかりに目が向かいがちですが、一方で利上げが実施されるということは景気が回復してきていることの証でもあり、特に利上げの早期の局面では株式が好景気によって受けるプラスの効果が、金利上昇によるマイナスの効果を上回るパターンが多いということを示しています。これは過去の局面で、特にハイテクや景気敏感セクターなどがいずれもS&P500指数を大幅に上回るパフォーマンスを示す一方、公益など金利敏感セクターのパフォーマンスが劣っていることからも裏付けられます。

一方で少し気になるのが為替市場の動きです。「2015年米国経済・株式相場の見通し」(1)でもお示しした通り、今年のドル円の目標値は127~128円との見方に変わりはありません。また財政問題が足かせとなって長期間にわたって金利を引き上げられない日本とアメリカの金利差は拡大する運命にあり、中長期的にドル高・円安という見方にも変わりはありません。しかし短期的に見てみますと、足元の日米実質金利差は0.6%程度しかなく、その割には直近の円安は進行し過ぎのように見えます。

実は昨年、ちょうど逆のことが起こりました。私は日米実質金利差から、昨年末のドル円レートを120円と予測していたのですが、昨年の今頃はずっと102円近辺での取引が続いていてずっと「おかしいな」と思っていたのを覚えています(結果的に日米実質金利差を反映する形でその通り年末120円になりましたが)。ただ昨年末以降、日米実質金利差は急速に縮小していて、現在ドル円は110円以下でもおかしくない状況になっています。分かりやすく申し上げれば、「日米実質金利差は0.6%程度しかない中で、昨年102円でドルを買って20%も利益が出る人が市場にたくさん居る状況」「地に足ついた上昇ではなく、それより高く買ってくれる人が居るから買っている状況」ということです。

もちろん今後日米実質金利差が拡大していって、この乖離は解消されるかもしれません。一方で短期的には、為替市場の方にも「利上げを気にし過ぎるリスク」が内包されつつあることを忘れてはなりません。

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