【今日のまとめ】
- ピア・ツー・ピア・レンディングは貸し手と借り手をウェブで結び付ける融資を指す
- クラウドファンディングとは違う
- 従来の銀行サービスは預金者と個人の借り手の双方にとって不利だった
- P2Pレンディングはクレジットカード・ローンの借り手をターゲットにしている
- レンディングクラブは証券化の手法を使っている
ピア・ツー・ピア(P2P)レンディングとは?
ピア・ツー・ピア(P2P)レンディングとはウェブサイトを通じてお金を貸したい個人とお金を借りたい個人を結びつける融資手法を指します。ピア(peer)とは「同等の者」という意味です。
P2Pレンディングと混同されやすい概念にクラウドファンディングがあります。しかしクラウドファンディングは:
- 融資ではないことも多い
- お金の出し手が金銭的な見返りを求めないケースが殆ど
などの理由からP2Pレンディングとはハッキリ区別されるべきです。
主なP2Pレンディング企業
P2Pレンディングを行っている企業はアメリカとイギリスだけで40社以上もあります。そのうち特に有名な企業は下の通りです。
会社名 | 英語名 | 特徴 | 所在地 |
---|---|---|---|
レンディングクラブ | LendingClub Corp. | 最大手 | 米国 |
プロスパー・マーケットプレース | Prosper Marketplace, Inc. | 大手 | 米国 |
ファンディング・サークル | Funding Circle Ltd. | 大手 | 英国 |
アップスタート | Upstart | 新社会人向け | 米国 |
ゾパ | Zopa | 英国最古 | 英国 |
P2Pレンディングが生まれた背景
アメリカで平均的な信用力を持つ消費者がクレジットカードでお金を借りるとクレジットカード金利は22%前後になります。その一方で普通預金口座にお金を預金しても利子は0.06%程度しかつきません。
乱暴に言えばこの二つの金利の差額が銀行のスプレッド(=利ザヤ)になるわけです。
つまり借り手は高利に苦しみ、預金者はスズメの涙ほどの利子で我慢しているわけです。
そこで銀行を通さず、直接、お金を貸したい人とお金を借りたい人をウェブで結び付ければ、借り手の金利を下げると同時にお金を貸したい人にはもっと有利な金利を提示することが出来るのではないか? という発想から生まれたのがP2Pレンディングなのです。
P2Pレンディング大手、レンディングクラブの場合
実際、P2Pレンディングの大手、レンディングクラブの場合、借り手がクレジットカードを止めレンディングクラブで借り直すと金利が22%から14.8%に下がりました。同様に貸し手が銀行預金をやめレンディングクラブを通じて出資すると利子は0.06%から8.6%に増えました。このように資金の出し手にとっても、借り手にとってもWIN-WINの関係が築けるのです。
貸し手にとってレンディングクラブが魅力な理由は、僅か25ドルから出資できる点にあります。またリスクに応じていろいろな投資先に分散投資することが出来ます。
借り手にとってレンディングクラブが魅力な理由は、3万5千ドルを上限としてお金を借りることが出来るので、クレジットカードでの借金の残高をレンディングクラブからの借り直しで一掃することができる点にあります。
現在、アメリカの消費者のクレジットカード・ローン残高は8,800億ドルあります。それは一世帯につき7,200ドル相当のクレジットカード・ローンがあることを意味します。
これは消費者がすでに借りているお金であり、しかもティーザー・レート(=最初の数カ月だけ金利を減免する)などの手法により銀行間でクレジットカード・ローン残高の奪い合いが繰り広げられている「逃げ足の速いローン」です。
従ってP2Pレンディングの企業にとって、このクレジットカード・ローン残高を奪うということが目下の経営目標になっていると言っても過言ではないでしょう。
急速に機関化するP2Pレンディング
さて、P2Pレンディングはもともと個人と個人を結びつけるプラットフォームでしたが、最近、機関投資家がこの機会に参加しはじめたことで急速にビッグ・ビジネスになりつつあります。
機関投資家はこれまでの株式、債券、商品などへの投資に加えてポートフォリオの多角化のひとつのメニューとしてP2Pレンディングを試し始めているのです。
機関投資家の参加は融資の原資となる資金が増強されることを意味します。このため以前より大きなスケールで融資が実行できるようになりつつあります。
これに加えて最近、P2Pレンディング最大手のレンディングクラブがニューヨーク証券取引所に新規株式公開する準備を始めました。株式が公開されると認知度が高まり、それが貸し手、借り手両方の数を増やす可能性があるわけです。
そこで最大手であるレンディングクラブがどう運営されているかについてもう少し詳しく見てみましょう。