10年本決算は30%増益、利ざや拡大や不良債権処理額の低減が寄与

現地コード 銘柄名 株価 情報種類
03328 中国交通銀行(バンク・オブ・コミュニケーションズ)  8.32 HKD
(04/01現在)
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中国交通銀行の2010年12月本決算は、純利益が前年比29.6%増の390億4200万元と、ほぼBOCIおよび市場の予想通りの水準となった。貸出伸び率が21.6%に達し、利ざやが16ベーシスポイント拡大する中、純金利収入の伸びが好決算を支えた。純手数料収入、トレーディング収入も大幅な伸びを維持。また、営業コストが増大する一方、不良債権処理費用は減少した。四半期別にみると、10-12月期には利ざやが前四半期比で5ベーシスポイント拡大。営業コストが膨らむ半面、引当金計上額が縮小し、前四半期比3.5%の利益成長を確保した。

10-12月期には信用引き締め策の下で貸出金利が前四半期比15ベーシスポイント上昇し、利ざやの拡大を後押しした。また、預金金利の全般的な安定推移も寄与したが、その一方で資金コストの増大が利ざやの伸びに影響した。BOCIは利上げ効果が反映されるのに伴い、今後も利ざやの拡大傾向が続くとみている。

10年通期の純手数料収入は前年比27%増の144億8000万元。決済、投資銀行、銀行カードなどの各業務が全体の伸びをけん引した。経常収益に占める手数料収入の割合は13.8%と、大手行の中ではさほど高水準にはなく、BOCIは資産運用などの新規業務が成長軌道に乗れば、今後の拡大余地は大きいとしている。

10-12月期には資産の質的改善が進み、不良債権比率は9月末の1.22%から期末には1.12%に低下した。不良債権残高もこの間に16億元縮小。これに伴い、不良債権引当率は9月末の167.9%から期末には185.8%に上昇した。また、貸出総額に対する引当率は期末に2.08%と、政府当局が求める2.5%の基準には届かなかったが、この基準の履行期限は13年に延期されており、BOCIは利益に及ぼす影響が限られるとみている。仮に12年末までに前倒しでこの基準を満たしても、11-12年の増益率は18%前後、ROE(株主資本利益率)は19%超の水準を維持する見通しという。

一方、同行のリスク要因としては預金伸び率の低さが指摘されている。10年通期には預金伸び率(20.9%)が貸出伸び率(21.6%)を下回ったことで、預貸比率が一段と上昇。単純計算に基づく預貸比率は78%と、同業銘柄の中でも相対的に高水準に達した。BOCIは当局がより厳しい基準を適用するのに伴い、預金基盤の不足が足かせとなる可能性を指摘。銀行間市場での資金調達が流動性管理に影響し、利ざや拡大の重しになるとの見通しを示した。また、もう一つのリスク要因は配当性向の低さ。同行は期末に現金配当と無償増資を実施する方針だが、現金部分の通期の配当性向は17%と、前年の約30%から大きく低下した。こうした配当性向の調整は、資本増強の必要性が高まっていることをうかがわせている。

同行の現在株価は2011年予想PBR(株価純資産倍率)1.23倍、予想PER7.0倍の水準。BOCIは株価の下値余地が限られるとしながらも、同行の資産負債構造が利益や利ざやの伸びに影響する可能性に触れ、株価の先行きに対して中立的な見方を継続している。