10年本決算は50%増益、収益成長期待の一方で引当率の低さが懸念材料

現地コード 銘柄名 株価 情報種類
00998 中信銀行(チャイナ・シティック・バンク)  5.66 HKD
(04/01現在)
 株価
 企業情報
 チャート

中信銀行の2010年12月本決算は、純利益が前年比50%増の215億900万元に達した。通期の引当金計上額が前年比73%増加したにもかかわらず、◇資産規模が前年比17%拡大した◇通期の利ざやが同15ベーシスポイント上昇した◇対収入コスト比率が前年の39.95%から33.82%に低下した――ことなどが好決算を支えた。四半期別にみると、10-12月期の純利益は前四半期比34%減。利ざやは前四半期を9ベーシスポイント上回ったが、営業コストがかさみ、引当計上が増加した。

10年期末の総資産は期初比17.2%増の2兆800億元。1-9月期に期初比9.6%の伸びにとどまった後、10-12月期に伸びが加速した。期末の貸出総額は同18.6%増の1兆2600億元。不動産担保ローンの伸びを受け、貸出残高に占めるリテール貸し付けの比率が期初の13.4%から17.0%へ上向いた。もともと公共分野に強みを持つ同行にとって、リテール業務の成長は収益源の多様化につながる見込み。BOCIはこのほか、10年期末の小規模企業向け貸出残高が72.8%増加したことに言及し、この点を前向きに評価している。

一方、10-12月期の利ざやは前四半期比9ベーシスポイント拡大したが、これは信用引き締め下での貸出収益率の上昇や、預金全体に占める要求払預金(普通預金など)の比重拡大、さらに利上げ効果などが背景。また、10-12月期には資産の質も改善し、不良債権比率は9月末の0.81%から0.67%に低下。不良債権額はこの3カ月間に97億2000万元から85億3000万元に縮小した。また、10-12月期の引当金積み増しを受け、不良債権引当率は期末に213.5%に達した。

期末の預貸比率は73%と前年比で改善したものの、同業銘柄の中では相対的に高水準にあり、BOCIはこの点を同行のリスク要因として指摘している。中国政府当局はこの先、1日平均ベースで預貸率をモニタリングするなどの厳しい管理システムを導入する可能性があり、仮にそうなれば一定の影響が見込まれるという。また、同行のもう一つのリスク要因は、貸出総額に対する引当率が1.44%と、政府当局が基準とする2.5%を下回ること。同行を含む中小行の履行期限が2016年に延期されたため、時間的に余裕はあるものの、それでもこの先2.5%への引き上げが不可欠。BOCIは向こう3年間の信用コスト率が、10年の0.26%から0.4-0.5%に上向く見通しを示している。

同行の現在株価は11年予想PBR1.36倍、予想PER8.5倍の水準。BOCIは11年1-3月期の好決算を見込みながらも、貸出総額に対する引当率の引き上げが必要となる点を懸念材料とし、同社株価の先行きに対して中立的な見方を継続している。